今年度所属する、こども青少年・教育委員会の視察で、7月25日に武雄市図書館を訪れました。武雄市はこれで2回目(前回はコチラ)。今回はたまたま、急遽市長自ら出向いてくださって、これまでの経緯や考えについてお話くださいました。
武雄市図書館は、TSUTAYAを運営する「CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)株式会社」が、指定管理者となって運営を行う事で話題になり、ご存知の方も多いと思います。図書館と言えば先日は、デンマークの図書館も拝見してきました。
今回の武雄の図書館改革、ことの発端は市長が「もっと多くの方に利用していただきたい」と考えた事から。市長自身も、「自分が行きたい図書館を作った」と言うように、18時に閉館する図書館では、仕事帰りには利用できない等の課題もありました。平成18年度までは、武雄市図書館の開館日は年間270日。19年度から改善が図られ、平成24年度には年間331日開館するまでに。また、開館時間の延長なども行われてきました。
一方、平成23年12月5日に代官山蔦屋書店がオープンしています。この代官山蔦屋書店に関するテレビ番組(カンブリア宮殿)を観た市長は、「市民のための図書館」のイメージと完全に一致した、ということでCCCの増田社長に直接武雄市の図書館運営を依頼したといいます。
その後、平成24年5月4日には、武雄市とCCCとの基本合意が締結され、7月の臨時市議会ではCCCを指定管理者に指定。9月の定例議会に於いては、図書館の改修、空間創出、システム更新、ICタグ貼付け等の予算として4億5千万円が承認されます。11月から25年3月までに、改修工事・システム更新、図書の移動・ICタグ貼付け等が行われ、4月1日にCCCによる運営が開始されています。
一般的には考えられない早さで、運営が開始されました。当初から市長には平成25年4月1日スタートのイメージがあったようですが、CCCも平成26年4月だと勘違いしていたほど、実現まで迅速に進められたといいます。何故これほど早く実現できたかと言えば、市長からもありましたが「スピードは付加価値」という発想があるからと言います。まず動かして、素早く進めれば、多くの人が関与してくる。その代わり、実現させた後からは、しっかりと課題を分析し、修正をかけていくスタンスだと言います。斬新的改良主義ともいえる方法・考え方で、市長が取組んでいる事が分かります。
武雄市がCCCとの提携によって、市民に提供しようとしている価値は、9つにまとめられています。
1)20万冊の開架蔵書 ⇒ 開架7万冊、蔵書18万冊から開架20万冊へ
2)雑誌販売の導入 ⇒ 代官山同様、マガジンストリートの導入
3)映画・音楽の充実
4)文具販売の導入(未実施)
5)電子端末を活用した検索サービス ⇒ iPadを30台導入
6)カフェ・ダイニングの導入 ⇒ スターバックスの出店
7)「代官山蔦屋書店」のノウハウを活用した品揃えやサービスの導入 ⇒ 自動貸出機、分類法、空間
8)Tカード、Tポイントの導入 ⇒ 同意、選択制による。1日1回、貸し出しで3ポイント提供。
9)365日、9時から21時の開館 ⇒ 以前は、年間30日休館10時から18時開館。
武雄市がCCCに支払っている指定管理料は、1.1億円。委託前は年間1.2億円かかっていたので、単純に言えば1千万円のコスト削減。とはいえ、開館時間の拡大などを行政がそのまま行っていた場合の試算は、2.1億円となっています。サービスレベルから見れば、1億円の削減をできていることになります。また、リニューアルオープンにかかった費用は、武雄市が4億5千万円、CCCが3億5千万円を負担していて、合計で8億円に上ったということでした。
結果として、オープンした4月には約10万人が来館(前年は約2万人)し、4月から6月の3ヶ月間では26万人(前年は6万人)が来館するほどの人気スポットに。5月4日(土)には過去最高の来館者、7,108名を記録したと言います(流石にキャパシティオーバーだったようです)。貸し出し冊数も、3ヶ月間で約15万冊(前年約7.7万冊)となっています。Tカードを図書利用カードとして導入したことでも話題になりましたが、これは選択制となっています。現在はTカードを利用している方が95.5%、専用の図書利用カードの利用者が4.5%となっていました(Tカードのデザインは、原研哉氏)。
今回初めて武雄図書館に足を運びましたが、単純な第1印象としては「ワクワクする」図書館だということです。もともと平成12年に建設された図書館の内装を変えたということですが、照明や配置など、また行きたいと思わせる造りでした。図書館法のからみなどで、できなかったこともあるそうですが、今後も見直しを進めながら、利用者の利便性を高められるよう取組んでいくという事でした。私も、平成25年度予算特別委員会では市立図書館のあり方について議論をしてきましたが、今後の図書館のあり方として、非常に参考になる取組みでした。
※武雄市MY図書館というスマートフォンアプリもリリースされています。
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