7月21日、「市民・文化観光・消防委員会」視察の2日目は新潟県燕市へ。若者のまちづくりへの参加を促すための、「つばめ若者会議」の視察となりました。
つばめ若者会議の経緯
「つばめ若者会議」は、燕市の20年先のビジョンを若者の手によって作ろうと、2013年6月からスタートした市主導の取組。少子高齢化や地方経済の停滞、後退は、全国各地で課題となっています。燕市も例外なくこの課題に直面。燕市の理想的な未来を実現するには、何よりも若者のエネルギーを活かしたまちづくりが必要と考えられるようになります。燕市では各種審議会などで市民参加の機会を設けていたものの、若者の参加が少なく、若者の声がまちづくりに生かされていませんでした。市民アンケートによれば39歳以下の若者のまちづくりへの満足度は「どちらでもない」が最も多く、まちづくりへの関わりが少ないことで、理解、判断しづらいことが分かってきます。
そうした背景から、年齢40歳以下を対象とした「つばめ若者会議」が立ち上がることになります。正式な発足前の2012年11月には、市職員の若手15名で構成された「プランナー会議」が立ち上がり、具体的なアイディアの話し合いからスタート。2013年4月〜5月には「概ね39歳以下で、燕市の未来のために力を発揮したい人」を用件に、メンバー募集が行われます。2013年5月からはメンバー候補ヒアリングが行われ、運営の業務委託先である「studio-L」によって、メンバーの意識調査や、燕市の基礎調査が行われていきます。その後studio-L代表の山崎亮氏の講演などを経て、6月30日に75名のメンバー(市民53名、職員22名)によって、「つばめ若者会議」が正式に発足しました。
つばめ若者会議の理念と目標
つばめ若者会議の理念は、「若者自らが暮らし、そして、子どもたちに引き継ぎたい20年後の燕市はどんなまちがよいか?」を語り合い、その実現のために行動していく若者によるまちづくりの場」とされています。その実現のために、(1)理想とする20年後の燕市の将来像「未来ビジョン」の策定、(2)ビジョンを実現するための行動計画「アクションプラン」の策定、(3)次世代リーダー、まちづくりの担い手育成、(4)会議に参画する若者同士の協働の推進(若者会議を継続開催する仕組みづくり)、の4つが目標として掲げられています。ここで「20年後」とされているのは、燕市の今の子ども達が、将来若者会議のメンバーと同じ20〜30歳代になること、という設定。子ども達により良い未来の燕市を残していこう、という意志の表れとなっています。
こうした理念や目標に基づいて、初年度のつばめ若者会議ではまちの課題の掘り下げや、地域の魅力と資源の見直し、他地域への視察などを行いながら会議を繰り返し、「20年後の燕市はどんなまちを目指すべきか?」を話し合い、具体的なビジョンへと展開していきます。その結果出来上がったのが「つばめの幸福論」という、ビジョン。この幸福論では、6つの理念と、3つの課題、9つのアクションプランと取り組むチームが明示されるとともに、幸福論がまとめられるまでの若者会議の経緯が「つばめ若者会議のつくり方」としてまとめられています。幸福論は冊子にもなっていて、内容も素晴らしいですが、デザインも優れています。冊子のデザインについては、メンバーの中にデザイナーが居たため、その人を中心に進められたと言います。
現状と課題
まちづくりや地域活性化などの活動において、常に課題になるのは人材の確保や資金調達です。つばめ若者会議も例外ではなく、自立した運営を市としては目指しているものの、道半ばでした。参加者数でいうと、2013年度は75名でスタートし、2014年度は81名になるものの、2015年度は49名、2016年度は41名と減少しています。対策として、将来若者会議の40歳以下の正式メンバーになり得る、30歳未満で若者会議に興味のある人を「研究生」として登録してもらい、イベント情報をメルマガ会員のように届ける仕組みを2016年度から構築しています。また研究生登録の中で高校生から29歳までが対象の「燕ジョイ(ENJOY)活動部」という、当該年齢の若者が自由に話し合い、楽しみながらやりたいことを実行するという仕組みも作られていました。研究生は現在21名で、19名が市民参加となっていますが、内14名は市外の大学生となっていました。燕市には大学が無いため、新潟市などの大学に参加者を募った結果、こうした状況になったと言います。
本体の若者会議のメンバー減少は市としても課題と認識されていました。研究生など新たな枠組みが用意されてはいますが、そもそもメンバーが減少した原因は当初メンバーの「燃え尽き症候群」ではないかと、説明がありました。また、2013年以降大々的なメンバー募集も行っていなかったということで、今後はメンバー募集にも力を入れたいと説明がありました。また首都圏在住の燕市出身の若者と燕市をつなぐ「東京つばめいと」という仕組みも活用して、まちづくりの担い手になってもらいたいという説明もありました。
燕市の総合計画(2016年度〜2022年度)では、戦略別計画の戦略2として「活動人口増戦略」が掲げられています。そこでは、市民一人一人の自主自立が目指されています。市長も「日本一輝いているまち」を目指していて、「そこに住む人が輝いている」ことこそが、まちが輝くことだと考え取組を進めています。そういった面からは、市、市長の気持ちの入れようも伝わってきます。とはいえ、まだまだ若者会議を市民だけで自主運営するには時間がかかりそうでした。今後は市民の自主的な活動として市から分離できるように、参加メンバーを持続可能な形で維持していくことや、そのために地域や人を巻き込んでいくこと、そして事務局機能を市民が担えるようにすることについて、注力していくことが重要だと感じました。
(※視察終了後は、3年前に開庁したばかりの市庁舎内を拝見しました。以下は、市庁舎の写真となります。)
市役所1階は、市民生活に関わる窓口がずらり。2階には土木、都市計画などの窓口。
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