自治体の広域連携。とやま呉西圏域連携中枢都市圏、視察報告。

2016-11-02 01:08:04 | カテゴリ:活動報告


高岡市議会

2016年11月1日、所属する特別委員会「大都市行財政精度特別委員会」の視察で、高岡市議会を訪れました。視察目的は、「連携中枢都市圏制度」について。

連携中枢都市圏制度

連携中枢都市圏制度は国が人口減少・少子高齢化社会において、地域を活性化し、経済を持続可能なものとし、行政サービスの継続性を確保するためには、市町村がそれぞれの行政単位だけで行政経営を行うのでは限界があります。相当の規模と中核性のある圏域を中心となる都市が近隣の自治体と連携し、「経済成長のけん引」、「高次都市機能の集積・強化」 及び「生活関連機能サービスの向上」を行うことで、当該の圏域での拠点となり、社会経済を維持しようとするのが、連携中枢都市圏制度です。

国で制度化されたのは平成26年度ですが、その段階での連携中枢都市の要件は、(1)政令指定都市または中核市(人口20万人以上)、(2)中夜間人口比率おおむね1以上、(3)三大都市圏の区域外に所在すること、の全てを満たした場合にとされます。高岡市の人口は約17万人で、この要件を満たすことができませんでした。そこで、富山県西部6市(高岡市、射水市、氷見市、砺波市、小矢部市、南砺市)の連携によって人口要件をクリアすることで、連携中枢都市になれるよう、国への要件緩和アプローチに取り組まれます。その結果、平成28年4月に隣接する2市を合わせて20万人以上(1市10万人以上)の要件緩和特例が実現します。この特例に基づいて、平成28年10月3日に6市による「とやま呉西圏域連携中枢都市圏に係る連携協約」が締結されました。連携中枢都市には普通交付税が、連携市町村には特別交付税が交付されるので、連携中枢都市圏になることには財政的にもメリットがあります。

とやま呉西圏域都市圏ビジョン

連携中枢都市が圏域の中長期的な将来像や、連携協定に基づき推進する具体的な取組みについて、連携中枢都市圏ビジョンを策定します。とやま呉西圏域都市圏においても10月、「とやま呉西圏域都市圏ビジョン」が策定されています。平成28年度から32年度の5年間が計画期間とされていて、圏域を構成する6市が持つ個性、特徴を活かしながら、圏域の発展に向けた取り組みや、従来からの連携を一層深めることで、経済成長や住民サービスの向上につなげ、中長期的な圏域の将来像を示す戦略となっています。

とやま呉西圏域都市圏ビジョンでは、圏域の特色・強みとして、
(1)産業:臨海工業地域を中心にアルミ、鉄鋼などの金属製品や繊維、化学工業等が集積。高岡銅器や井波彫刻等の伝統産業も発達。
(2)観光・交通:世界文化遺産「五箇山合掌造り集落」、倶利伽羅源平古戦場、大境洞窟住居跡、国宝「瑞龍寺」、高岡御車山祭、城端曳山祭、高岡・山町筋、井波・城端の門前町、日本海側最大の斜張端「新湊大橋」、海王丸パーク、氷見の業業文化を伝える魚々座、砺波チューリップ公園など、多くの歴史・文化的な観光資源。北陸新幹線、北陸自動車道、東海道北陸自動車、能越自動車道、伏木富山港等の広域交通・物流基盤整備に伴う東海・飛騨地方、石川県、福井県等の交通拠点。
(3)農林水産:チューリップ球根、干柿、種もみ、ハトムギ、コシヒカリ、マグロ、寒ブリ、シロエビ、ベニズワイガニ、ホタルイカ、庄川あゆなどの全国的な知名度を誇る農林水産品。
が掲げられています。

一方、圏域が直面する課題としては、
(1)若い世代の都市部への流出や出生率の低下等による人口減少と高齢化の進行、経済成長の低迷、それらに伴う中心市街地の空洞化。
(2)生産年齢人口の減少に伴う農林水産業、製造業を中心とする地域産業の衰退の恐れ。
(3)地域医療、地域の保健・福祉サービスを担う人材不足に伴う生活関連機能の低下。
が挙げられています。圏域の将来推計人口は、2010年の457,576人から2040年には333,973人へと減少が推計され、全国平均の16.2%を大きく上回る、27.0%の減少率となる推計となっています。

環日本海の中核拠点として

こうした課題を解決していくために圏域が目指す将来像として示されているのは、広域交通の結節点であり、日本海対岸諸国を視野にいれた広域的な交流・交易拠点という強みを活かして、「環日本海の中核拠点」になろうというものです。また連携中枢都市圏としての拠点形成を活かした新たな取り組みや、各種連携プログラムの充実・強化、人口減少対策などを網羅的に進めることで、30万人の人口規模を維持する圏域を形成しようとしています。そのため2060年の目標人口を、社人研準拠では247,545人に減少するものを、319,129人を目標人口として掲げています。

圏域づくりの基本方針としては、(1)圏域の成長を後押しする人づくり、(2)強みを活かした「稼ぐ力」の創出、(3)つながりの深化による好循環の実現、が3つの柱となり、9つの基本方針が策定されています。基本方針に基づいて、5つの重点プロジェクトが定められ、呉西にかけて「5星ーFIVE☆STARープロジェクト」と名付けられています。5星は、(1)地方創生熱源育成プロジェクト、(2)定住・移住トータルサポートプロジェクト、(3)ものづくり先端技術集積・強化プロジェクト、(4)呉西の「稼ぐ力」新創造プロジェクト、(5)呉西エリアシームレスプロジェクト、となっています。

こうした基本方針や5星プロジェクトは具体的な「連携事業」に落とし込まれ、32の事業が具体的な取り組みとして描かれています。例えば産業クラスターの形成、イノベーションの実現等を目的とした、「とやま呉西圏域共創ビジネス研究所運営事業」や「企業・創業支援事業」、地域医療・介護・福祉の充実を目的として「看護人材育成事業」や「こども福祉支援相互連携事業」、地域振興を目的に「企業誘致の一体的推進」、「就業マッチング支援事業」などが定められています。こうした事業には各市の役割や費用負担に関しての基本的な考え方が示されています。費用負担については「関係市の協議において決定する」とされていて、「原則人口割」と明示されているものと、その明示が無いものがあるなど、事業によって費用負担の考え方は変わるようです。事業によっては広域連携に関する富山県の補助がでるものもあるそうです。

まだ緒に就いたばかりなので、具体的な取り組みが始まるのはこれからという段階です。とはいえ既に状況の異なる6市が連携することの課題も見え隠れします。「企業誘致の一体的推進」はその課題の分かりやすい例です。6市の中で新幹線の駅があるのは高岡市であるように、企業誘致が実現する場合に有利に働く地域とそうでない地域がでます。一体的に誘致に成功しても、直接的な恩恵は誘致された当該市が受けることになります。質疑においても職員の方から「企業誘致は連携でもあり、競争でもある難しい課題」とありました。また率直にいえば、連携だけでなく合併まで進んだほうがいいのではないか、という印象を受けました。市町村合併は一段落したと国としても判断しているようで、6市の中でも合併の考えは無いとのことでした。

とやま呉西圏域都市圏

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