2018年5月14日、川崎市の南部給食センターの視察を行いました。川崎市は平成29年度から、市立中学校全校にて完全給食を実施しています。横浜市では未だ中学校給食が実施されていません。私は横浜市でも中学校給食を実施すべきだと考え、これまでも議会で何度も提案し、議論を重ねてきました。全国の約89%の中学校では給食が、約84%では完全給食が実施されていますし、近年は川崎市を始め、大阪市や神戸市など、導入が遅れた政令指定都市においても、中学校給食の実施が進んでいます。共働き世帯の増加から、弁当の準備の負担軽減といった課題も背景にありますし、食育や、栄養バランスの観点からも、導入が求められてきました。学校給食法においては小学校、中学校の別なく、給食の実施が努力義務とされています(学校給食法第四条)。
横浜市においては「中学校昼食」として、家庭弁当、業者弁当のほか、平成29年1月からは全校で、配達弁当の「ハマ弁」が利用可能となっています。しかしながらハマ弁の喫食率は、平成30年(2018)年4月では1.7%(暫定値)と、低迷を続けています。平成30年4月からは喫食率の向上を促すために値下げが行われましたが(米飯とおかず、汁物のセットは390円から300円に)、その効果は小さいものにとどまっています。
川崎市においては、昭和30年代にも中学校給食実現についての議論が行われたらしいですが、具体的に動きがあったのが平成23(2011)年11月に「中学校完全給食の早期実現を求める決議」が議会で可決されたことと、何より平成25(2013)年10月の川崎市長選挙の選挙公約に中学校給食の実現が、すべての候補者から掲げられ、当選した現市長が、平成25年11月「川崎市立中学校給食の基本方針」を定めたことが大きな転換点となっています。
80.3%の保護者が、事前調査で給食を求める
川崎市が中学校給食の実施を進めるにあたり、基本方針策定後の平成25年12月に「中学校における昼食についてのアンケート」が、小6の児童、中1の生徒、それぞれの保護者、に対して実施されています。そのアンケートのなかでは、お弁当の持参回数や内容、弁当作りの大変さといった項目と、小学校の給食について、そして中学校給食があったほうが良いかどうか、について調査が行われました。
そこでは、保護者に対しては「中学校でも小学校のように子どもたちが(食缶から)それぞれの食器に盛り付けて食べる給食があった ほう良いと思いますか。」という質問が行われ、あったほうがよい(80.3%)、ないほうがよい(2.5%)、どちらともいえない(16.9%)、無回答(0.3%)、とおよそ8割の保護者が給食を求めていました。児童・生徒に対してはほぼ同じ内容で「中学校でも小学校のように自分たちが(食缶から)それぞれの食器に盛り付けて食べる給食があった ほうが良いと思いますか。」と質問が行われ、あったほうがよい(33.2%)、ないほうがよい(26.2%)、どちらともいえない(39.7%)、無回答(0.9%)となっていました。
97.5%の保護者が導入を評価、生徒の83.3%は味を評価
そして全校実施後の平成30年2月には「中学校給食に関するアンケート」が行われました。給食センターから配送されている2校が抽出され、1〜3年の生徒とその保護者に対してアンケートが行われました。保護者に対して行われた「中学校給食が始まったことについて、どう思いますか。」という質問には、よい(80.3%)、どちらかといえばよい(17.2%)、どちらかといえばよくない(1.8%)、よくない(0.6%)、無効・無回答(0.2%)と、「よい」と「どちらかといえばよい」合わせると、97.5%の保護者が、中学校給食導入について良かったと評価しています。生徒に対しては「給食は、「おいしい」ですか。」という質問が行われ、おいしい(35.8%)、どちらかといえば、おいしい(47.5%)、どちらかといえば、おいしくない(10.6%)、おいしくない(5.7%)、無効・無回答(0.4%)となり、「おいしい」と「どちらかといえば、おいしい」を合わせると83.3%となっています。
事前アンケートでニーズを把握した上で中学校給食実施に踏み切り、平成26年8月には実施方針(素案)の公表・パブリックコメントの実施、同10月には実施方針が決定され、同11月には学校給食センター整備等事業実施方針が公表されるなど、迅速に準備が進められました。
中学校給食実施状況
川崎市立中学校は52校あり、およそ29,265人(H29.5.1現在)の生徒が通っています。平成29(2017)年の途中で、全校における完全給食が始まっていて、南、中、北の3つの学校給食センターから48校分を担当し、自校調理方式が2校、小中合築校方式が2校、という内訳になっています。方式が複数に分かれた背景には、提供可能数の問題があったそうです。全校実施を検討するなかで、親子方式や全校自校調理など様々な方法が検討されたといいます。そうしたなか、生徒、教職員の喫食人数のピークを3万3千〜4千人と見込んだ上で、3つの給食センターでは3万1千食までカバーでき、プラスアルファの残りの部分を調理する方法が必要だった、つまりセンターだけでは足りなかったというのがその背景でした。
3つのセンターは全てPFI方式で事業が行われています。平成26年度〜平成43年度までの事業期間において、中学校給食全校実施における事業費の総額が約446億円。そのうち、学校給食センター整備等に係る費用の総額が、約347億円。内訳は、南部が154億円、中部が112億円、北部が81億円で、債務負担における各年度の支出予定を平成30年度〜平成43年度分を平均すると、各年度約22億円となります。最大規模の南部では15,000食、中部は10,000食、北部は6,000食が、1日あたりの供給可能数となっています。
実施のための課題は、実施のために解決する
横浜市教育委員会と議論をすると、センター方式の場合、横浜市は中学校給食を配送する事を想定して校舎を建設していないため、対応できない、という課題がしてきされます。この点は川崎市も全く同じ状況だったといいます。校舎や外構が全く対応していなかったため、調査を行い、各学校に「配膳室」の整備が行われています。配膳室の整備は、既に平成26年度から予算化されています。また配送用のトラックが通るルートの外構工事が必要なところと、必要ないところもあり、必要なところは工事を行っています。要した費用は詳細には分かりませんでしたが、H27.9月の試算では、「小中合築校・自校方式、配膳室の整備:約20億円」となっていて、この予算のなかで行われたそうです。
給食の時間は、食事(喫食)時間が20分程度、準備・片付け合わせて35分〜40分程度が設定されています。横浜市では昼食時間が15分程度しかないことが問題ともなっていますが、川崎市では朝の授業開始時間を早めたり、終業時間を遅くすることで対応していると言います。食物アレルギー対応については、特定原材料7品目(卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば)の除去食での対応が行われ、対応食が必要な一人一人に合わせた調理が行われ、一切アレルギー食材と混ざることが無いよう手順が組まれ、調理、配送されています。
給食センターの安全管理には国の衛生管理基準等を遵守することはもちろん、HACCPに対応した衛生管理が行われています。残食は8%程度で、全て家畜の飼料化によってリサイクルが行われています。またセンターは防災設備が用意されていることはもちろんのこと、発災時には貯蔵しているお米を調理して、地域の避難所へ配送することも想定されています。中学校給食のコンセプトとして「健康給食」という川崎の特色を打ち出していて、主要食材(米、肉、魚など)国産率100%、年間の1食平均国産野菜125g摂取、米飯給食90%以上、など質の充実にも取り組まれています。
まとめ
私も地域において、非常に大勢の保護者の方々から、中学校給食を求める意見を頂いています。横浜市でも中学校給食を実施すべきだと考えています。これまでも議会では何度も議論を行っていますが、横浜市は中学校給食の実施意図が無いため、給食を求める市民の皆さんの意見すら聞こうとしてきませんでした。設備に関わる様々な課題は確かにあるにせよ、中学校給食実施方針を決めた川崎市は、その課題を乗り越えるために具体的な施策に取り組み、市民が求めてきた中学校給食の実現につなげています。課題があるからやらない、というスタンスではなく、必要なことをどうすれば実施できるのかを、市民の声と向き合いながら、検討していく必要があると考えます。
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Comments 5
現状 実現が難しいとされている課題を 解決するための 中期的な計画(予算も含めて)を検討したことがあるのでしょうか 必要な予算をどのように全体予算から生み出すのか 分かりにくいですね
青葉区民会議でも昨年度要望提案を出しています。次回も検討していますが、市民・区民としてはどのようなことを中学校の親だけでなく知らせることが効果的でしょうか? 中学校でのアンケート(過去に実施)から、http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201409/images/phpNDLKMs.pdf 何を採用したら ぬくもりのある昼食 になったのでしょうか・・・
この2014年に行われた「中学校の昼食に関するアンケート」の問題は、「中学校給食」に関する設問が無いことでもあり、市が提案している現在のハマ弁の素案とも言える「栄養バランスのとれた温もりのある昼食」の検討材料として行われた点にありますね。
後者から言えば、全員喫食を想定していないものである中で、約18%の中学生の保護者が「毎日注文したい」と答えたこと(設問7)から、横浜市としては2割程度の利用を見込めると判断してきています。実際には、7月で2.2%の利用に留まっていることから、アンケートの作りが悪かったとも言えますし、具体的な利用を想定できる前、内容が詳細に決まる前のアンケートでもあるので、保護者等アンケートを回答する側のみなさんも、よく分からないまま答えざるを得なかったとことも想定されます。前者については、アンケートの「その他」でまとめられているところには、中学校給食を望む意見が多数寄せられてきました。しかしながら、給食を選択肢に入れていないアンケートであり、注文弁当の検討をするためのアンケートであったことから、その他意見として相手にされていません。見込みから大幅に外れているハマ弁の利用率を考えれば、利用しやすさを改善するという方向性で税金を投入するだけではなく、そもそもハマ弁自体の見直しと、給食を含めた調査や検討を行う必要があると考えます。
中学校給食の情報につていは、どう伝えるのが良いのかはいつも悩みますが、
(1)全国の喫食率
※http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/kyuushoku/kekka/k_detail/1387614.htm
(2)川崎等近隣自治体や政令市の状況
(3)共働き世帯の増加
などをお話しています。いずれにせよ、弁当を作った経験がある方や、現在作っている方、これから作る可能性のある方など、ほとんどの方が中学校給食を求めているということは、私も理解していますし、横浜市も中学校給食を実施すべきと考えています。
31年度横浜市予算への要望・提案として今回も青葉区民会議として 中学校給食をだしました。実際どのような状況なのかはよくわからないのです。ただ 今日ヘルスメイトの研修会で、こんなことを聞きました。 中学学生で 給食のある日と給食のない日ではカルシウム摂取量が違う 今日の講座は明治乳業が講師でした。 横浜市では中学校給食がないですね・という話からカルシウム摂取量の話になり、給食というのは中学生にとって栄養バランスからいくとやはりかなり重要だと言えます。
中学校給食のポイントの1つは、バランスのとれた栄養の摂取ですね。経済的理由で、十分な昼食を用意できない家庭、子ども達もいます。このへんは、児童委員さん達も危惧しているところで、生活保護や就学援助を受けている場合、給食費の補助がありますが、給食でないとそれが出ません。家庭弁当も、余裕があれば栄養バランスを考えられるかもしれませんが、それどころではないというケースも多いと思います。栄養士さんが献立をバランスよく考えてくれる点含めて、給食のメリットは大きいですね。