喫食率80%超え。鎌倉市のデリバリー型中学校給食。

2019-06-25 09:44:02 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

6月24日、所属する会派の視察で鎌倉市役所を訪問しました。横浜市では中学校昼食(給食ではない)として「ハマ弁」を実施していますが、2019年5月末現在では喫食率が3.5%と、目標とされる20%には程遠い状況となっています。一方鎌倉市の「デリバリー給食」は、横浜市と同じ事業者が調理等の委託を受け、同様にお弁当を配達する方法で、喫食率が80%を超えています(初年度の2017年度は72.8%、2018年度は80.9%、2019年度の4月、5月実績で83%)。

中学校給食導入の経緯

鎌倉市では2010年度から中学校給食の調査が始まり(調査結果資料)、2012年度には「鎌倉市中学校給食庁内検討委員会」が設置され、望ましい中学校給食のあり方や実施方法についての調査、検討が行われ、報告書がまとめられています(報告書)。2013年度には、現市長の2期目の選挙マニフェストにて「中学校給食(お弁当との選択制を検討)を導入します」と記載されます。その後、2014年度〜2016年度には重点事業に登録され、2014年度に調査・検討、2015年度、2016年度に基盤整備、2017年度に全校実施とするスケジュールが示され、概算費用3億4,700万円が充てられています。2014年度には民間事業者への意向調査や、保護者への利用見込みアンケートが実施され、小学5年生の保護者からは約8割、中学校2年生の保護者からは約6割から、「毎日利用したい」、「週2〜3回利用したい」という意向が示されます(アンケート結果)。

2015年12月2日には、横浜市のハマ弁事業者と同じ「ハーベスト株式会社」と、中学校給食調理等業務の業務委託契約が結ばれ、2016年2月からは配達される給食の受入室整備が着手され、2016年度には給食予約システムの委託契約を「株式会社フューチャーイン」と締結。2016年11月には「鎌倉市立中学校給食基本方針」が示され、その中では「中学校における昼食は原則給食とします」と明示されました。その後は、市内全9校において新入生保護者説明会などにおいて事業の説明が行われたり、夏休みを利用して試食会を行ったりと、保護者に対する事前の説明が丁寧に行われていきます。そのうえで、2017年11月7日より、一斉に中学校給食の実施となっています。

鎌倉市中学校給食
様々な調査資料

90%を超える高い満足度

中学校給食を導入した結果についても、アンケートが取られています。2018年1月には全ての生徒にアンケートが行われ、全体の満足度のうち、「満足」「やや満足」「ふつう」までの合計が73%となっています(生徒アンケート結果)。保護者に対しては2018年9月にアンケートが行われ、給食が始まったことをどう思うかという問いに対して「良い」「どちらかといえば良い」の合計が90.2%と、高い評価を得ています(保護者アンケート結果)。

利用者の負担は1食あたり330円。学校給食法に基づく給食ですので、利用者負担は食材費のみとなり、それが330円。その他の人件費等の必要な費用は、年度ごとに「調理等業務委託料」として鎌倉市から事業者に支払われ、2018年度は約2億円となっています。事業者との契約では、喫食率に応じた1食単価が決められています。現在の喫食率80%以上90%未満では1食単価が342円。喫食率が30%未満なら851円、30〜40%は644円、40〜50%は519円、50〜60%は435円、60〜70%は395円、70〜80%は365円、90〜100%は323円となっています。

鎌倉市中学校給食
導入前に配布された説明資料

高い喫食率を実現している鎌倉市の特徴

鎌倉市の高い喫食率を支えている特徴は、(1)原則給食とした点と、(2)「在校時一括予約」という、一度手続きをすれば卒業までの3年間ずっと給食を選択し続けられる、という仕組みがある点です。横浜市ではハマ弁導入時からしばらく「家庭弁当を基本」とする方針が示され、あくまでも家庭弁当の代替手段としてのハマ弁という位置づけが行われてきました(現在は「ハマ弁」「家庭弁当」「業者弁当」から等しく選ぶ選択制)。保護者の方からも、家庭弁当が基本とされている中でハマ弁を選択することは、サボっているようで頼みづらいといった意見も聞かれてきました。横浜市の場合は鎌倉市と似た形での弁当配達システムをハマ弁としていますが、これは給食ではありません。位置づけが根本的に異なり、鎌倉市のように学校給食法に基づくわけでもないため、費用負担の考え方も異なります。

また、鎌倉市の導入している「在校時一括予約」は、小学校6年生時に申請を一度行うだけで、以降3年間卒業するまで、注文手続きが不要となる利便性の高い仕組みとなっています。現在、この一括予約を利用している生徒がおよそ7割ということで、8割を超える喫食率を大きく支えていることが分かります。ハマ弁も喫食率向上を目的に、注文方法が何度か変更されてきました。当初は7日前までに注文する方法のみだったものが、昨年10月には一括注文が可能となり、今年の5月28日からは全校で当日注文が可能となっています。現時点では、当日注文の想定数は1日400食(1校2〜3食想定)となっているので、準備数を超える注文があると「売り切れ」になりますので、当日注文による急激な喫食率の向上は望めません。

横浜市でも課題となっている昼食時間については、9校中8校で改善策が取り組まれていました。15分だった昼食時間を20分にした学校、昼食時間は15分のままでも準備時間を5分長くした学校、昼食から昼休みまでの間に5分の緩衝時間を設けた学校など、子どもたちが食事をする時間を確保するために工夫が行われていました。その他にも、後発の利を活かして、他市で実施されてきたデリバリー給食のいいところなどを参考にし、ご飯と汁物を温かい状態で届けられるようにしたり、アレルギー対応食の提供を行ったり、おかわりご飯の提供を行ったりと、利用者目線での工夫が行われています。

まとめ

鎌倉市の中学校給食、デリバリー給食が高い利用率を実現しているのは、やはり「原則中学校給食」としてスタートさせたところは大きいのではないかと考えます。それぞれのご家庭が選択できる状況にあるという部分は横浜市のハマ弁と同じですが、「原則」としたことで利用者の心理的なハードルを無くすことに成功できたのではないかと考えます。横浜市の場合は、20%の喫食率目標を掲げて未だ3.5%ですし、そもそも事業者との契約においても20%の喫食率までしか想定していません。当日注文が可能となったとはいえ、1週間前の注文数から想定した仕入れしか行わないため、当日注文は「売り切れ」が生じます。横浜は3つの方法から選択できることにはなっていますが、選択できる数量には上限があるというのが実情です。

鎌倉市でも検討段階では、自校調理(単独調理場方式)、親子方式、給食センター方式(共同調理場方式)、という他の方式も検討されてきましたが、費用や法律、用地など様々な課題があるなかで、民間事業者の調理によるデリバリー方式が選択されています。また、他都市同様保護者の給食に対する意向についても、アンケートなどを行いながら確認されています。

私は横浜市でも中学校給食を導入する必要があると考えています。横浜市でも、多くの保護者の方から給食を求めるご意見を頂いています。様々検討し、乗り越えるべき課題があっても、子育てしやすい環境づくりや子どもの貧困対策、都市間競争の時代における選ばれる都市の条件整備などの観点から、横浜市でも中学校給食を導入すべきです。

鎌倉市中学校給食

鎌倉市中学校給食

実際に食べさせて頂きました。ご飯と汁物には、「保つくん」という保温・保冷剤が入れられ、温かい状態で食べられます。今日のメニューはビビンバ丼。美味しいお弁当でした。

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