地域交通サポート事業とデータ活用・分析について。

2019-12-09 21:01:08 | カテゴリ:活動報告


12月2日に開かれた「郊外部再生・活性化特別委員会」では、横浜国立大学の中村文彦教授をお招きし、「郊外部を活性化させる持続可能な地域交通」と題した講演を頂きました。その中で先生から示されたのは、「横浜市の人口密度であれば、ある程度利用し運賃収入が増えれば、多くの場合ランニングコストをカバーできる」というご指摘です。

私はこれまで、横浜市が取り組んできた「地域交通サポート事業」には導入のハードルがあると考えてきました。そこで、地域の人口密度などデータを分析することで、路線の採算見込等を事前に役所が提示し、導入にかかる地域の方々の手間を軽減できないかと考え、担当者と議論してきました。質疑では先生と意見交換し、採算見込みを機械的に算出する可能性など、やり方と工夫があるのではないかとご提示頂きました。

以下、藤崎と中村先生との質疑部分、文字起こしです。
(※議事録ではないので、実際の内容とは若干言い回し等が異なります。)

人口データの分析でバス路線の需要予測ができないか

藤崎 ありがとうございました。あらゆる可能性というか、すべての事業者、ステークホルダーとすべての可能性とすべての組み合わせでいろんな実証実験をやっていくことが必要なんだなというようなお話に受けっとったところがあるのですが、そうしたなかで、「横浜市の場合人口密度が高いために、おおむね運賃収入が増えればランニングコストがカバーできるので、地域ぐるみの利用者の努力があれば、ほぼ大丈夫じゃないか」ということ(ご指摘)かと思うのですが、その視点に立つと、いわゆる不便地域、もしくは空白地域と呼ばれるような所においても、人口密度やそこの沿線の住民の人口等々を分析して計算をしていけば、概ねどれくらい採算性が見込めるかどうかとか、そういったことはある程度は計算をできてくるのかなと。そのうえでバスがいいのか、タクシーがいいのかとか手段が様々あるのを実証実験で動かしていくと、一定程度のニーズをカバーできてくるということになるのかなというふうにもうかがいながら考えていたのですが、 そのへんというのは、 そういった可能性、データに、いろんな分析に基づいた路線の設計というのは、可能性としてはあるということでしょうか?

中村教授 横浜市というのはですね、かなり昔から市内のいろんな情報をGIS地理情報システムという形で持っていらっしゃるんですね。 たぶん一番細かいのは25メートルメッシュくらい、25メートルの正方形くらいで、全部データが電子化されているんですね。ですのでそこから始まって、ものすごい優秀な職員の方が多いので、分析的なことがいろいろ可能なことはまず間違いないです。そして空白地域、不便地域という部分は、他の場所に比べれば要するにバス会社が自分から入ろうとしないというわけですから、そんなにおいしくないわけですよね。と彼らが思っているわけです。ところが入ってみて、ちょっと住民の意識が変わると、さっきから申し上げましたようにランニング、カバーできるかもしれない。でもその時に気をつけなきゃいけないのは、分析をするときにですね、大体こういう人だとほっといたらバスを利用するだろうと前提で計算すると、今日の僕の議論はひっくり返ります。ちょっと頑張って乗るくらいまでいかないといけない。
これは、こっち向いてもいいんですけれども、普通の需要予測をしてはいけなくて、例えば地域があると、地域の話を聞いているとどうもここからここに乗り物がこういるだろうと、これをあそこのバス会社にお願いいすると、1日10便のバスだとすると1日あたりこれだけのコストがかかると、このコストをカバーするのに220円で割り算すると1日これだけの乗車人数がいると、人口はこれだけであると、この人口でこれだけの数値を確保するためには、1日平均0.5回乗ってくれないといけない、2日に1回乗ってくれなきゃいけない。それは無理だとなったらおしまいですよね。
なので、それはケースバイケースで、直感的には繰り返しますけど、そんなことはないだろうと思っています。だけど一個一個の路線に対してそのバス、あるいはおっしゃったように場合によってはタクシー、あるいは自家用有償を成り立たせる時にはこれだけの乗車人数が必要、それはこの地域の沿線の住民一人で割ると、例えば40代50代60代の人が週に1回、70代の人が週に2回とか乗るとという計算が出来るわけですよ。その計算の数字の通りに乗ってくれるかどうか、乗ってもらうということがそれぞれの人の生活を、結構今日また乗らないといけないのかとなってしまうのか、気軽に乗れるのか、これは実験を通して、だけどそういう分析をしていくことで、見込みが見えてくるんだと思います。

藤崎 ありがとうございます。地域交通サポート事業の課題というか難しさの一つが、住民がグループを作って、それでまあ合意形成を行っていったうえで実験をしていくという流れがあるなかで、近年の交通事情の主なニーズで高齢化にともなうものを、我々としては地域でよくうかがっていくなかで、高齢者の方々がなかなか自分たちで発意して、路線を作るための運動を作っていくことの労力を割きづらいというまあその労力がなければ成り立たないということ、そもそもその努力がなければ路線を維持するためのコストを本当にまかなえるのかという課題はあるのですが、一方では立ち上げるためのエネルギーがないと、そもそも路線を通せないというニワトリ卵みたいな話があるので、そういったときに仮にある程度路線の提示がデータ上出来れば、その提示した路線を取りたい、やりたいと思うかどうかはまた住民に任せられていくと、ある程度見込みを立たせて議論していくことが出来るのかなと思ったりはしているんですけど、これはやってみないとわからないんですけど、そこらへんは。

中村教授 ありがとうございました。とても参考になりました。その実際の住民からの発意、具体的な提案とか、市役所の方々のお仕事の仕方の詳細というのは全部は存じ上げていないんですけれども、おっしゃったとおりある程度今の電子化されたデータがある中で、こういうところにあるといいなということを言ったら、ちょこちょこちょこっと、そのあれですよね?A列車で行こうとかいろいろシムシティとかありますけど、あのイメージですよね?
これをナントカバスの標準単価でいくと、1日これだけ人数乗らなきゃいけなくて、みんなが週に何回乗ることになるよというところくらいまでが機械的に出てくればイメージ変わりますよね?たしかにね。
その部分まで計算しろとはなかなか出来ないし、コンサルを雇うにしても何にしても手間がかかりますけど、その少しだってメニューというのはそんなに何百通りもあるわけではないですから、データは繰り返しますけどありますから、そうだとしても分析のコストかかりますので、途中の議論じゃないけど、サポート事業全体のご支援は必要だと思いますけど、そのうえで行政側のほうである程度のメニューというのはお見せすると、でも発意がとか気持ちだけは持ってもらうけど、物理的な作業量が負荷がかかるようなイメージにはなったらいけないかもしれませんね。そこは少しちょっと今聞いてて、もしかしたらやり方の工夫があるのかなというふうには思いました。ありがとうございます。

 
<参考>
特別委員会の全体の様子は、以下リンク先のネット中継の録画映像からご覧いただけます。
2019年12月2日郊外部再生・活性化特別委員会録画

Comments 2

  1. 太田真一 より:

    本日のタウンニュースをみて、ホームページも閲覧させていただきました。
    地域サポート制度を地域住民が進める場合に、ハードルが多いということですが、自分としては、ある程度地域も汗をかく必要があると考えています。そのうえで、専門的なところは行政支援だと思います。
    青葉区は規模が大きいバス会社、タクシー会社が運行しているので恵まれていると思います。昨日の朝日新聞では江ノ電バスが乗員不足で路線を廃止する記事が出ていました。
    そういうことから考えるとバス事業者も決して楽ではない。埼玉県のあるバス会社は、需要があると変わっていても、運転手が確保できず、新規路線を断念しました。
    そのためには、住民は、路線を要望するだけでなく、地域が自分たちで利用しやすい交通を考え、利用する習慣が必要となります。
    その習慣づけが、住民主体の調査や合意形成だと思います。
    現に、地域主体でコミュニティ交通を導入した地域も、導入がコールではなく、導入後それを維持するためにどうするのか色々取り組んでいると思います。そこまでやれる地域を造っていく必要があると思います。
    また、これは、その地域だけも問題はなく、青葉区、横浜市全体が、バスを利用する習慣づけも併せて行っていく必要があります。それにより、バス事業者への負担は軽減され、地域への協力もしやすくなるのではと思います。

    今後も、地域交通や公共交通全体への様々な提言を期待しています。

    • 藤崎浩太郎 より:

      タウンニュースなどご覧いただき、またコメントいただきましてありがとうございます。

      運転手をはじめ、人口減少による人手不足、担い手不足は深刻になってきていますね。地域交通の運転手なども、乗合タクシーを導入している地域では、通常のタクシー営業の合間に路線に入るというかたちで車両と運転手を確保していたりしますね。路線をどう作るか、どう運用するかにおいて、誰が担うのかは大きな課題であり、そのへんを見通した社会実験なども行われています。

      地域交通サポート事業の導入時のハードルは、地域住民の高齢化によるハードルですね。質疑の中でも触れていますが、グループを形成し、調査し、合意形成し等々、体力も、時間も必要とするものです。そもそもその入口でつまづくこともあります。完全に見通しのない手探りから始めるよりも、一定程度事業の見通しを事前に立てることができれば、達成すべき目標も立てやすく、その目標に向かって話も進めやすいのではないか、という提案が私の申し上げるところのデータ活用での需要予測です。

      ご指摘の通り地域交通サポート事業は、本格運行後は補助を入れずに採算が取れる状態を維持する必要があるため、路線周辺住民の乗車努力が必要となります。この部分は、導入段階での動機づけや、乗車回数の目標の共有や乗車努力が必要です。中村先生のご指摘の「おおむね運賃収入が増えればランニングコストがカバーできる」という点は、まさにこの乗車努力の部分ですね。私もこの事業の性質上は、住民の努力が必要だと思いますし、そのためには行政が路線を設えるのではなく、住民同士で路線導入を進めることに意味があると考えています。ただ、担い手に恵まれないことで交通環境の改善ができなかった、ということにはならないでほしいと思っています。一定の予測を提供することによって、地域が地域交通サポート事業への一歩を踏み出しやすくなってほしいなと考えています。

      地域交通の充実には、運転手の課題もありますし、導入・維持の様々なコストもあります。また税負担をどう考えるかという視点も重要です。更にこれからの時代の、自動運転等の技術革新によって得られる新たな方法を、いかに取り入れていけるかということも重要になってきます。今後もしっかり調査研究をしながら、取り組んでいきたいと思います。

      今後ともよろしくお願いいたします。

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