国際物流のデジタルイノベーション。Willbox株式会社視察。

2021-04-26 22:59:55 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2021年4月26日、みなとみらいのWeWorkに本社を構える、Willbox株式会社に視察にお邪魔し、代表取締役の神一誠さんにお話を伺いました。Willbox社は、横浜市の起業支援事業「YOXOアクセラレータープログラム」の第1期に採択された企業で、国際物流にイノベーションを起こす事業に取り組んでいらっしゃいます。

(※参考:横浜市経済局「グローバルアクセラレーターによるアクセラレーションプログラムに横浜市の支援するスタートアップ3社が決定しました」)

サプライチェーン全体でのイノベーションを起こす

物流には(1)時間、(2)お金、(3)安全という3つの課題があり、そこに着目して神さんは起業されています。(1)時間については、荷主さんが物流事業者に見積もりを依頼してから、見積もりが発行されるまで3日間程度を要しており、(2)お金については、事業者によって価格が様々で透明性が低く言い値な面も強く、また見積もりを作っても8割位を失注していて、薄利多売のビジネスであり、(3)安全については、薄利多売であるが故に得意ではない貨物を扱ったり、能力を超えた受注をせざるを得ないこと、が課題になっていたといいます。

この課題に着目してWillbox社では「Giho」という、物流事業者と荷主のマッチングプラットフォームを提供しています。このプラットフォームを利用すると、見積がたった10秒で発行されます。10秒で見積もりが発行されるのは、データベースに提携物流事業者の価格や設備などの情報が登録されていて、荷主が必要な情報を入力すると、システム上でマッチングが行われるという仕組み。Willbox社としては、荷主から貨物の大きさ×1,000円の手数料を得ることで、収益化されています。

このシステムによって、荷主は明朗会計と素早い見積もりというメリットを得ます。一見物流事業者にとっては利益が減りそうですが、既に100社を超える事業者と提携しています。背景には、フォワーダーという存在があります。荷主と物流事業者の間に立って、従来マッチングやコーディネートを担ってきた存在ですが、ここにコストがかかっていたため、荷主からすると負担増、物流事業者からすると利益減になるという側面があります。Gihoを使えば、物流事業者は自ら望んだ価格を設定できるため、フォワーダーが入るよりも利益を得やすくなるというメリットがあります。荷主にとってもコスト面でのメリットがあり、インボイス価格のうち物流費が、フォワーダーを入れると5%を超えるものが、Gihoだと3%以下になるといいます。現在Willbox社では、工業製品の物流のみをターゲットにしていて、扱う金額が大きいため、1%でもコストが下がると荷主にとっては大きなメリットになります。更に今では、フォワーダーからもGihoに入れてほしいと、オファーをもらうまでになっているそうです。

国内外に同様の事業に取り組む企業はいないということで、国際物流に大きなイノベーションを起こすことが期待されます。元々神さんのご実家が、川崎市で梱包会社を営んでおり、物流における木箱での梱包をデジタル化、システム化することを目指して、起業へと進まれました。コンテナが物流に革命を起こしたように、Gihoが物流に及ぼす影響は多大なものになりそうです。一見すると、ただのオンラインマッチングサービスに見えますが、その裏側では物流フロー全体のコスト削減を行う仕組みがあり、港や配送先に合わせてフロー全体で価格圧縮が行える仕組みになっているそうです。今後は各港ごとのレギュレーションを反映したり、ビッグデータの収集によって、サプライチェーン全体の見直しを提案できるような展開を目指されています。

横浜市のスタートアップ企業にとっての課題

既にアーリー期の資金調達に成功されていて、今後はシリーズAに移行しての資金調達を目指されている段階です。また事業計画では社員を増やす計画があり、現在は移転先となるオフィス探しに難航されている状況でした。ここに、横浜市のスタートアップ企業を取り巻く課題の1つがありました。みなとみらいを探せば、大きいオフィススペースを見つけることは可能でも高価であり、30万円前後程度の家賃で丁度いい設備、広さのオフィスが、東京都比べて見つけるのが困難だと課題の提起がありました。このスタートアップ企業に丁度いいオフィスが少ないという課題の解決が、市に期待されていることの1つでした。

また、口座開設も課題だったと言います。登記を行って、銀行で口座を開設しようとしたときに「売上はありますか?」と聞かれてしまうそうです。これから事業を行って売上を立てていこうというスタートアップ企業には、この部分は大きな課題。起業から、登記、口座開設、オフィス探し、ベンチャーキャピタル(VC)とのマッチングまで、一貫したサポートが得られると良いと課題提起されました。合わせて、シード期からシリーズAの段階にまで進むスタートアップ企業が限られていて、シリーズAの資金調達ができないスタートアップ企業が多い中で、横浜にはシード部分の分母となるスタートアップ企業が少なく、ライバルや競争相手も少ない、という課題も示されました。

神さんは横浜市出身であり、事業も港に関わることで、横浜での創業が大前提で、横浜から出ていくつもりは無いと仰っていました。しかしながら、全てのスタートアップがそうとは限りません。横浜市での起業を選んでもらうとともに、横浜市に居続けたいと思ってもらえるような、横浜市をはじめとした様々なプレイヤーによる支援や、ビジネス環境の充実にいかに取り組んでいけるかが、今後の横浜市における経済政策にとって重要だと考えています。

藤崎浩太郎

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