生成AI、ChatGPT活用先進自治体。横須賀市視察報告。

2024-01-11 23:37:21 | カテゴリ:活動報告


ChatGPT

2024年1月11日、横須賀市役所を訪問し、生成AI「ChatGPT」活用の先進的な取り組みについての視察を行いました。横浜市においては、2023年11月から実証利用が始められていて、デジタル統括本部と総務局の一部である200名の職員が実証利用の対象者となっています。横浜市としての生成AI活用の経緯には、2023年9月の本会議質疑において私から市長に対して生成AI利用の提案を行い、山中市長が「有効活用を前提とした検討を深めてまいります。」と前向きに答弁をしたという流れがあります。
(※質疑の内容はこちら→https://www.fujisakikotaro.jp/blog/activity/entry5596.html
  大項目13行政イノベーションの取組の質問41)

全国初とシティプロモーション

横須賀市は2023年4月20日に、地方自治体として初めて「ChatGPT」の全庁利用を開始したことから「生成AI全国初導入」と紹介され、先進自治体として注目されてきました。6月には実証結果を公表するとともに、本格実装が開始されています。リリースを出す当初からシティプロモーションも意識されたそうで、テレビではNHKと民法キー局すべて(5局)をはじめ海外メディア、新聞も全国紙5紙をはじめ多数の地方紙でも紹介されるという結果を出されていました。

導入に当たっては、市長の強力な後押しとスピーディーな進行もあり、庁内からの反発が表立って生じることもなく、市民からも応援のメッセージが数多く寄せられたと言います。また沢山の報道がなされたことで、企業からChatGPT活用の協力の申し出や共同開発の依頼が多数寄せられたそうです。現在AI戦略アドバイザーに就いている、深津貴之さん(THE GUILD代表)もその一人。

全庁3,800人への導入目的

横須賀市では最初から全庁導入がなされ、3,800人の職員全員が使える環境が用意されました。この「全職員」への導入については3つの目的がありました。
(1)職員が新たなテクノロジーに触れることによる意識の改革。まずは触ってみよう。
(2)文書作成業務等の効率化。
(3)職員から利用方法を収集し、ベストプラクティスを横展開したい。
という3つです。特に(3)は、より多くの職員が利用したほうが良いことであり、最初から母数を最大化させたということです。

また、元々庁内では「LoGOチャット」という自治体専用ビジネスチャットツールが使われていて、ChatGPTはLocGoチャットとAPI連携で導入されています。職員が日頃から使っているツールを活用することで、3,800人が慣れているインターフェイス上でChatGPTが使えるようになり、利用のハードルを下げることに成功していて、約1,900人(50%)が利用しています。API連携にあたっては、LoGoチャットとChatGPTの間にサーバーが立てられていますが、市職員がリースアップPCを使って内製していて初期費用がかかっておらず、月8万円程度のAPI利用料金が生じている程度ということで、低コストでの導入にも成功しています。

ChatGPT

ChatGPT活用の懸念事項と対応

ChatGPTの導入・活用にあたっては、情報漏洩の心配が一番課題として示されるポイントです。横須賀市では、「3つの壁」で対策を講じています。1つ目は、OpenAIの規約です。規約では、API経由でのChatGPT利用の場合は、入力情報は学習には使われないようになっています。2つ目は、入力情報を学習には使われないように、オプトアウトしていること、3つ目は、職員に機密情報や個人情報を入力させないよう徹底していること、となっています。API利用で一定の壁の効果を得られていることが、重要なポイントだと考えます。

職員に機密情報等の入力をしないようにと徹底されていますが、条例で利用方法をさだめたり、分厚いガイドラインは設けられていません。使い方をいくつか示していて、その中では「やってはいけないこと」として、

・個人情報を使った質問、
・機密情報を使った質問、
・庁外に出る文章を作って、校正せずにそのまま使う、

ことの3点が示されています。「正しい使い方」としては、

・人間が作った文章・条件を基に作文・要約・校正してもらう、
・対話を重ねて発想に使う、業務の進め方のアドバイスをもらう、
・業務の進め方のアドバイスをもらう、
・案出しをしてもらう、
・Excelの関数を作ってもらう

の5点が示され、「△」としてはネット検索の代わりに事実を知るために使う、ことが示されていて、合計9点の「つかいみち」が示されている以外には、定めがありません。これは、ルールが難しくなればなるほど利用のハードルが高くなり、触らなくなってしまう恐れがあると考えられたため、最低限のルールに止め、多くの職員が頻繁に使えるようにしてきたということでした。

チャットGPT通信とコンテスト

新たな技術の導入に際しては、組織内での反発や、職員の技術の向上などに課題が生じます。横須賀市では「ほぼ週間チャットGPT通信」をデジタルで発行し、ChatGPTの活用方法や具体的なプロンプトの共有が行われています。深津貴之さん監修の研修では、400名近い職員が参加し、自主参加の研修としては市役所史上最大数になったということで、職員の関心の高さがわかります。

活用事例の掘り起こしや、活用に対するモチベーション向上のために「ChatGPT活用コンテスト」が実施されています。52件の応募があり、デジタル・ガバメント推進室審査で10件に絞り、深津さん審査で優秀賞5件が決まり、そのうち1件が最優秀賞に選定されたそうです。ChatGPTに業務効率改善についてのエクセル関数を教えてもらって、目視2時間作業を行っていたものが10分で終わるようにできた事例や、消防法令を会話口調で分かりやすく解説し、理解しやすくした事例などがあったそうです。

今後の取組と課題

行政がChatGPTを活用していく道は2つあるとして、(1)直接的に使用する職員の利用スキル、リテラシーの向上と、(2)ChatGPTをパーツとして用いた新たな行政ツールの開発と既存の行政ツールの改良、が示されていました。(2)のパーツとしての活用としては、既に「他自治体向け問い合わせ応対ボット」が開発され、運用されています。これは、多数の自治体から横須賀市のChatGPTの取り組みについて問い合わせが寄せられることに対して、ChatGPTを活用して自動応対できるようにしているものです。誤った回答が生成される可能性など、まだまだChatGPTの課題があることから、市民の方の一般利用に供することはハードルが高いものの、限定的な範囲(ChatGPTの活用)で限定的な対象者(他自治体)向けに、庁外からの利用に手を付け始めたという段階でした。

課題としては、自治体特有の3層分離というネットワーク構成があるため、ChatGPTの文章生成機能しか活用できておらず、画像生成や音声機能等の利用などAIサービスをすべて導入するにはハードルが高いという課題や、問い合わせ応対ボットの発展をさせるにも、保有するデータ形式がまちまちな上に紙ベースもあり、膨大なデータベースの準備に課題がある、ということも示されました。

全体通して

2022年に策定された「横須賀市基本構想・基本計画」において、「変化を力に進むまち。横須賀市」という未来像が掲げられて、新たなテクノロジーにの活用についても明記されています。市長が積極的にChatGPTを推進したことだけでなく、共有された未来像があったことが推進の力になったと、説明していただいた職員の方から言及されていました。横浜市での実証は一部の職員200名でのスタートとなっていますが、横須賀市は3,800名全員でのスタートであったり、活用のために様々な工夫がなされていたりと、「まずはじめて、やりながら調整していく」という取り組み姿勢を、行政としてしっかり形にしている点が素晴らしいと感じました。

横須賀市ChatGPT

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