多文化共生施策と情報発信。宜野湾市視察報告。

2023-11-02 08:23:42 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2023年11月1日、常任委員会「国際・経済・港湾委員会」の視察2日目の2か所目は、宜野湾市における多文化共生施策について、宜野湾市議会にてお話し伺いました。

宜野湾市の人口100,137人中、外国人住民は1,764人で(2023年9月現在)、人口の約1.76%外国人という状況にあります。コロナ禍で2021年には外国人の住民数、割合はともに減少しましたが、現在は再度増加傾向にあり、今後も増加の見込みとなっています。50カ国の国籍の方がいらっしゃるそうですが、フィリピン国籍が最も多く、アメリカ、中国、ベトナム、韓国、ブラジルと続き、近年はネパールの方も増えているそうです。

多文化共生・国際交流の取組

2015年度〜2016年度に、「沖縄県多文化共生モデル事業」のモデル自治体に選出されています。モデル事業では、市役所の各部署に対する調査が行われ課題が把握され、通訳コーディネーターの庁内窓口への派遣、多言語対応資料の作成、市役所内に英語表記版を設置、といった対応が実現しています。

視察の際にご説明をしてくださった職員の方のお一人は、「多文化共生マネージャー」と「多文化共生アドバイザー」の認定を受けていらっしゃって、地域の多文化共生施策推進の担い手とし活躍をされていました。宜野湾市の多文化共生施策は主に市民経済部市民協働課で行われていて、下記の多言語生活ガイドブック等のご説明は市民協働課の職員の方々からご説明をいただきました。一方、多文化共生マネージャー・アドバイザーの方は、基地政策部基地渉外課渉外係長という役職にありながら、市民協働課の施策を協力して推進したり、視察や取材の対応、個別具体の取り組み内容への助言等に取り組まれています。仕事をする上での難しさとしては、予算の確保や施策のアイディア(予算面・法制面)、協力者を得ることとされていました。

多言語生活ガイドブックと情報発信

外国人住民の増加や多国籍化という背景と、一般財団法人自治体国際化協会の助成金を獲得できたということから、「多言語生活ガイドブック」が制作されています。英語版、中国語版、やさしい日本語版の3種類が用意されています。特徴は、左のページは日本語、右のページは全く同じ内容の英語版(中国語版、やさしい日本語版)という構成になっている点です。

ガイドブックの制作にあたっては、限られた予算で、何を掲載するかは悩ましかったということですが、宜野湾市を知り、宜野湾市に愛着をもってもらうことを目的としたとのことです。年金や医療保険、ゴミの捨て方といった制度の説明は、政府や市が用意しているWebサイトへのリンクををQRコードで記載することで省略し、写真を多く、地域の地図や買い物の場所、自治会の説明や一覧などを記載することで、生活に近い情報をわかり易く伝える内容になっています。また、事前にGoogleのアンケートフォームを使って、外国人にどんな情報が掲載されたら良いかの調査をしたところ、上位を占めたのは地域との関わり方の情報がほしいというものだったということから、宜野湾市在住の先輩外国人のインタビュー記事が掲載されていたりします。

外国人が市役所で転入手続きを行った際には、「ウェルカムパッケージ」と呼ばれる生活に必要な情報資料の一式が配布されています。多言語生活ガイドブックの他に、ゴミの分け方・出し方パンフレットや災害時に便利なアプリの資料、就労・労働に関する資料等がセットになって渡されています。その他、市報の英語版が発行されていたり、多言語情報Facebookページで市政やイベント情報を英語とやさしい日本語で発信されたりしています。

情報発信の先には、具体的な参加や理解促進も課題となります。宜野湾市では、住民向けのやさしい日本語での防災ワークショップの開催や、市職員向けのランチ英会話勉強会・やさしい日本語講座の開催、外国籍生徒・保護者向けの高校受験・進路相談説明の開催、などが行われています。

課題と今後

全国的な課題とも共通している、新たな在留資格の創設、外国人住民の増加、国籍の多様化、気象災害の激甚化など、社会経済情勢の変化等がもたらす影響に対して、いかに対応していけるかが課題となっていました。特に外国籍児童生徒の教育環境や外国人住民が賃貸住宅を借りる際の貸し渋りの問題が表面化しているそうです。また、多文化共生推進プランを宜野湾市は制定していないことに対する課題感もありました。

今後は、外国人住民と地域住民の顔が見える関係を構築するための場づくりや、日本語教室の開催、市職員や地域住民に「やさしい日本語」を普及促進すること、教育や福祉、防災など様々な分野とつながっていくことなどに取り組んでいくということでした。

宜野湾市

宜野湾市
中央が「多言語生活ガイドブック」

多言語生活ガイドブック
左ページは日本語、右ページは同じ内容の英語

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