黄金町、ってどういうイメージでしょうか?
ある程度の期間、横浜にお住まいの方でしたらあまり良いイメージは無いであろう、黄金町。ピーク時は約250店舗が、非常に狭いエリアに軒を連ねる売春街でした。
その街の再生が始まったのが、2005年。神奈川県警が集中的に摘発を行いました。違法営業自体は排除されましたが、一方で建物は残ったまま。警察が手綱を緩めれば、いつでも営業が再開されてしまう状況だったそうです。そこで「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」が中心となり、地域、警察、行政が協力して街の浄化に取り組みを行いました。防犯を強化するために、2006年には防犯拠点「ステップ・ワン」が設立され、2009年には「黄金町交番」が開所しました。一方、それまで違法営業が行われていた店舗は、地権者と建物の所有者が複雑に入り組んだ状況で、撤去するのが非常に困難な状態にあります。そこで横浜市は、所有者と個別に交渉を重ねて、1件1件借り上げることにしました。ピーク時に250件あった店舗は約180件(違法営業はしていません)に減り、そのうち66件を現在横浜市が借りているということです。
そして、街の過去のイメージの払拭、地域の再生を行うために、横浜市が借りている店舗を利用したアートイベント「黄金町バザール」が2008年よりスタートしました。(黄金町エリアマネジメントセンター)
地図を見ると良く分かりますが、本当に狭いエリアに、沢山のスタジオ・展示スペースが設けられています。その中でも、黄金町再生のシンボルとも言える建物が、黄金スタジオと日ノ出スタジオです。この2つのスタジオは、大岡川から良く見える場所に建設され、アートによる再生の象徴になっています。もともとあった店舗を改装したスタジオがほとんどですが、黄金・日ノ出スタジオは新しく建築されたものです。
小さくても魅力のある展示会場が点在し、お茶を飲みながら何時間でも楽しめそうな場所です。私が行ったのは火曜日でしたので、来訪者はそれほど居ませんでしたが、関係者の方によると、今年は今までで一番来客が多いとのことで、土日は3千人もの方が訪れたりするそうです。
ほとんどの会場が無料ですが、いくつか有料施設があり、入場にはパスポートが必要になります。このパスポートにも上手く工夫があり、スタンプラリー帳にもなっています。スタンプを集めて商品をもらえるという魅力もある一方、主催者が是非足を運んでほしいという場所にもスタンプを設置することで、上手く誘導する仕組みになっています。
アートにあまり関心がなくても、十分楽しめるようにできていた「黄金町バザール」。このアートによる街の再生によて、地域住民の自信が回復した、地域コミュニティが再生してきた、2005年から6年というスピーディーな街の再生が実現できた、などの効果があったそうです。
一方まだまだ課題もあり、横浜市との交渉をいまだに行わない店舗の所有者は、今でも違法営業の復活を狙っているようです。また、街の雰囲気にも課題があるなと感じました。1つは、高架下に無造作に立てられている鉄鋼板です。鉄道高架の耐震補強の後、そのままになっている無機質な鉄鋼板は、細い通路の反対側に並ぶアートスタジオと異様なコントラストを呈しています。もう1つは、まだまだスタジオ化された店舗が少ないことです。沢山スタジオがあるとは言っても、点在している状況。その間を埋められる工夫が足りないと感じました。黄金町バザールを開催しているあたりの雰囲気は、いわゆる「路地裏」です。猫が沢山いたり、面白さもありますが、普通の細い道の片側が鉄鋼版で、足元は普通のアスファルトで、もう一方の一部がアートスタジオ。アートが無いと、昔から軒を連ねていた店舗が並んでいるだけなんです。
と、課題も書きましたが、是非「黄金町バザール2011」足を運んでみてください。きっと楽しめると思います。たとえば、日の出町駅そばの「竜宮美術旅館」。その昔はそういう目的で使用されていた旅館だそうですが、今はNPOの力で美術館になっています。ただ、もうすぐ再開発の予定があり、今年で無くなってしまうそうです。1階はカフェにもなっていて、ゆっくりくつろげます。たとえば、八番館。黄金町バザールのポスターなどになっている作品が展示されている会場ですが、笑える仕掛けも用意されていたりします。
防犯と、再生と、街づくりが同時に行われている黄金町エリア。長期的な取り組みが必要になります。今は3分の1だけしか市の管理下にありませんが、長く取り組み続ければ、その数が増えていきます。その数が増えれば、もっと魅力ある街に変えていけます。横浜の「負」の面を一手に引き受けていた黄金町。このアートによる再生、創造都市という取り組み、地域、警察、行政との連携が成功すれば、横浜を代表する地域へと変わり、国内外から参照される事例になっていくと思います。
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