2日目の2校目は、上海市徐匯中学を視察しました。1860年に設立。もともとは、揚子江の氾濫によって行き場を失ってしまった児童を、イエズス会が受け入れたことが起源です。そのため、設立当初より英語教育に力が入れられてきた経緯も持っています。当初は私立だったものの、1931年より公立化。上海市内でも特に豊かな地域に所在し、もともとは男子校だったものの、1953年に女生徒を受け入れて以来、名門校となっています。生徒数は2,200名ほどで、今日職員数が220名と、大規模な学校でもあります。中学校では10クラスあるものの、高校には6クラスしかなく、厳しい進学環境にもあります。
同校の教育は、科学、技術、体育を伸ばす方針。上述の通り、設立以来英語教育は当然のように行われてきたためか、特段英語教育に力を注いでいるということは無いということでした。しかしながら、英語の教師の能力は、市内でもトップレベルであると自負されていました。また、科目としては、国語、数学とともに英語が重要な科目であることも認識されていて、同校の英語教育の特色は、読み書きだけでなく、会話とヒアリング、読解に力を入れていることだといいます。中国でもセンター試験のような仕組みがあり、他の学校では試験対策的な勉強がなされるケースもあるようですが、同校では実際に使える英語を身につけさせたいと考えているとのこと。
習熟度の差を埋めるために
上海の公立校も、学区制です。そのため、どうしても生徒の習熟レベルに差があるそうです。そのため、中学校入学時点で、英語のレベルの差を埋めるために、徹底的に発音など基礎から再教育を行うそうです。その一つの方法に、家で発音練習したものを録音して、学校で先生が指導する、ということも行われています。またその後も差を埋めるための取組が継続的に行われ、①趣味、②習慣、という2つの側面からの対策が行われています。中学校入学時点では、生徒の好奇心が旺盛なので、英語に興味を持ってもらえるように、欧米のヒットソングを教材にしたり、ディズニーアニメを利用したり、英字新聞などを教材にし、ニュースからの話題をてーまにしたりと、生徒に興味を持たせるよう工夫していました。近年では、オバマ大統領の演説や、スティーブ・ジョブズの本も活用されてきたそうです。その他にも、勉強会やコンテストへの参加を促したり、同校でも芝居が活用されたり、上海交通大学の教授が生徒に授業を行ったりしていました。
教材の独自開発
教員同士の協力体制も整えられ、毎週1回英語の先生が集まり、翌週の授業計画についての検討を行っています。また、現在上海市で共通の教材を教員同士で検討し、ついさいきん新しい教材を独自で開発したそうです。今後の課題も明確にされていて、読解力に注力していくために、基準をどのように設けていくかが検討されているそうです。同校の教員の契約期間は1年と3年の2種類。校長は、上海市教育局からの指名で就任し、任期は教育局次第です。
そしてこの学校の大きな特徴は、芸術です。公立校なので、普通は入試はありませんが、一学年400人のうち60人は美術か音楽を専攻する、芸術コースになっています。このコースのみ、入学の際に美術・音楽の試験が課されます。また、専門の教師も雇用され、教師毎に美術・音楽の教室が用意されています。教室の内外には、生徒の描いた作品が多数展示されていましたが、非常にレベルが高く、驚きました。
まとめ
どこの学校もそうなんですが、生徒の習熟度を向上させるために、あらゆる工夫が行われているなと、感心しきりです。同校でも、上海第3女子中学校でもそうでしたが、教材を独自で開発している。しかも、教員同士で検討しあって。恐らくその手前にある授業のプログラムを検討しあう中で、上海市の提供する教材では、自分達の目指す教育を行うためには不十分だと認識していくのだと思います。契約制の雇用で、厳しい競争下に置かれる教員にとって、子ども達の学力を向上させることは、何より大きな目標であり、成果です。その厳しい環境に置かれるからこそ、優秀な教員が排出されていくのだと考えます。
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