横浜市のMICE戦略について。

2012-05-08 20:07:06 | カテゴリ:活動報告


5月7日、市民・文化観光・消防委員会が開催されました。今構成では最終となる委員会でした。そこで文化観光局から報告があったのが、横浜市のMICE機能強化への取組です。
(※MICEとは : Meeting(企業等の会議)、Incentive Travel(企業等の行う報奨・研修旅行)、Convention(国際機関・学会等が主催する総会・学術会議等)、EventあるいはExhibition(イベント・展示会・見本市)の頭文字のことを表す。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベント等の総称)

横浜市のMICEは、2009年は世界34位でしたが、2010年には世界24位と開催件数が増えています。中期4ヵ年計画において横浜版成長戦略2(P28)とされ、横浜市が力を入れている政策分野です。MICEには、経済の活性化や街のにぎわいへの効果などが期待されています。そして、横浜のみならず、日本中、世界中の都市が、MICEによる成長を目指し、競争をしている分野でもあります。

横浜市のMICEの特徴の1つが、医学分野の開催が多いことです。2007~2009年の間で日本で開催された医学系の国際会議のうち、13.6%が横浜で開催されています。昨年7月に設置された「横浜市MICE機能強化検討委員会」が3月にまとめた提言書でも、ターゲットの明確化として「医学・バイオをはじめとするライフイノベーション、IT関連」が挙げられています。

今回の委員会で当局と議論したことは、このMICE機能強化にあたり、文化観光局単独で国際会議や、展示会をただ誘致するだけでなく、関係する諸政策、各局との連携をすることについてです。例えば、企業誘致です。先日視察に訪問したシンガポールは、MICE先進国でもあり、世界1位のMICE開催国です。2000年には121件で9位だった開催件数が、2010年には725件で1位となっています。背景には国主導で大規模施設を整備したり、低価格の賃料設定を行っているという指摘や、人材育成などの機能強化が行われた、という指摘もありますが、それだけではないと考えます。シンガポールでは航空機エンジンで世界2位である、ロールスロイスの工場誘致に成功しています。それに付随して部品会社の集積が進んでいるといいます。その結果、航空産業の展示会の規模も拡大し、以前は世界3位の規模だったものが、次回は1位になると予測されているといいます。横浜市も企業誘致に力を入れています。税制の優遇やMICEでのターゲットを医学系に絞っていくのであれば、国内外からの企業誘致も、医療系の企業に注力し、業界の特性に合わせた支援を行うことが必要だと考えます。

また、医療の側面からいえば、医療ツーリズム(医療観光)への取組も重要であると考えます。横浜市の中期4ヵ年計画においても、基本政策の中(P111)でニューツーリズムへの取組として、産業集積などを活用することが記載されています。また、2010年に閣議決定された国の「新成長戦略」でも国際医療交流として、医療ツーリズムへの取組が盛り込まれています。日本ならではの技術力の高い医療の提供を魅力として、医療目的での国外からの入込客数の増加を目指します。海外でも、特にアジアでは低価格を売りに医療ツーリズムのマーケティングを行っている国もありますが、横浜の場合は価格競争ではなく、技術競争、滞在環境競争となると考えます。そのためには、医療設備の充実、医療体制の充実はもちろんですが、高い技術をもつ医師の確保も重要です。横浜市北部病院には、内視鏡で世界トップの技術をもつ先生がいます。こういう優秀な医師が横浜で働きたいと思える。そして、横浜の学校や医療機関で、優秀な医師を育成していく。人材、技術、設備などの面を総合的に整え、「医療といえばYOKOHAMA」という環境を整備していく。

医療関係の産業が集積していけば、横浜市の経済が活性化します。充実した医療体制が整えば、医療ツーリズムでの観光客を増加させることができます。特に医療体制の充実は、横浜市民に提供されるものでもあるので、何より市民へのサービス向上に確実につなげていく。企業誘致といえば経済局です。医療政策といえば健康福祉局です。観光・MICEは文化観光局です。こういった関連する部局が連携できるかどうか。

横浜市文化観光局は昨年5月に設置され、同時に、局内・局間・庁外との連携を深めるために「魅力づくり室」が設置されました。そして、今年から文化観光局長に就いたのが、昨年の魅力づくり室長です。今回の委員会では、経済局や健康福祉局と連携をしていくという答弁も局長からありました。今後の取組に期待しつつ、あらぬ方向に逸れぬよう注視していきます。

<参考>日本政策投資銀行レポート (1) (2)

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