横浜市におけるEBPM。常任委員会の質疑から。

2018-03-22 12:46:11 | カテゴリ:活動報告


横浜市会平成30年第1回定例会において、私は2月27日の本会議における予算関連質疑を行っています。また、3月15日、16日には常任委員会「政策・総務・財政委員会」が開かれ、予算や議案などについて審議が行われました。

今回の議会で力を入れて質疑を行ったのは、いわゆる「EBPM(Evidence Based Policy Making):証拠に基づく政策立案」についてです。EBPMや、証拠に基づくと表現すると、分かりにくさがありますが、政策に関する統計データなどを活用しながら、目的や評価可能な目標を設定し、事業実施後には評価を行い、無駄な事業を無くす、コストを削減する、最適な資源配分を行うことにつなげるための方法です。

2月27日の本会議では、
 3 横浜の都市ブランド向上とデータ活用の推進
 5 オープンイノベーションの推進
 6 米州事務所
 7 教職員の負担軽減と教育の質の向上
 11 介護分野のオープンイノベーション
 13 よこはまウォーキングポイント
 14 国民健康保険の特定健診
といった形で、政策局、経済局、国際局、健康福祉局、教育委員会に、EBPMの観点、データや分析、目標設定や評価、といった観点から質疑を行っています。

3月15日、16日の常任委員会「政策・総務・財政委員会」では、総務局に対しては、職員の超過勤務やしごと改革を切り口に、財政局に対しては、予算査定における財政局視点でのEBPMへの考え方について、局長、副市長と議論を行っています。

以下、総務局と、財政局とのやり取りについて、質疑を少し要約して書き起こしたものです(正確な議事録ではありません)。
※YouTubeから該当部分もご覧いただけます。

総務局 2018年3月15日

藤崎
職員の超過勤務について、本会議質疑で市長からは、「超過勤務に効果は無い」と答弁があった。超過勤務の問題は、仕事と人の配置の問題を抜きにしては語れない問題。今回の議会では、EBPMについての議論、成果や目標についての議論、データ活用の議論が繰り返し行われた。

100のコストで200の成果の事業と、50の成果の事業があれば、50の事業は見直さなくてはいけない。政策局では官民データ活用が行われはじめている。各局、各課の事業において、効果を分析して、意味のあるところに投資をして、効果のないところの配置を見直していなくてはならないのではないか。

定性的には成果が出ているとはいくらでも言えても、かけているコストに対してマイナスなのであれば、総務局の「しごと改革」の視点から取り組む必要があるのではないか。より効率的な働き方、より効果的な税金の使い方を目指すには、費用対効果に対して敏感な取り組みを総務局から後押ししていく必要があるのではないか。

総務局長
たいへん重たく、難しい課題であると認識している。人件費は行政の中で最大のコスト。どれだけの労力をかけて、どれだけの効果が上がったかは、市民の皆様にきちんと説明できるようにしなければいけない。一方、コストをかけても、成果が50でも取り組まなければならない、行政の責務もあるので、そいうことも合わせて説明していく必要がある。

いずれにせよ、しごと改革で進めている業務の見直し、財政による予算編成、それに対する人事査定は、三位一体で進めていくことなので、関係局、特に財政局と総務局が連携していかなくてはならない。また、EBPMというか成果がどうかも、考えながら進めていく必要があると認識している。

藤崎
先日の質疑でも、横浜市大のデータサイエンス学部との連携についてのご答弁があった。しっかりとした目標を立案し、評価をするための技術的な機能を、内部や外部に持たないと、精密な議論に展開できない。いかにして、その機能を持たせていくかを、今後検討していく必要があるのではないか。

副市長
横浜市は基礎自治体であり、福祉、医療、子育て、まちづくり、経済振興など、現場を有している。現場にこそデータがある。373万人という最大の基礎自治体であるため、大きなロットのデータがある。自治体のみならず、国全体の今後の政策を考えていく上で、データの宝庫である。

その横浜市が設置している横浜市大にデータサイエンス学部ができ、横浜市という大きなデータのフィールドを分析することで、課題を抽出し、新たな政策を提案できるようになるのは、市にとっても、市大にとっても有益。

同時に、それを担う横浜市の組織の効率性、最適なリソースの配分についても提言をしていただけるのではないかと、期待をしている。今は政策局が所管しているイノベーション推進本部において、政策局や総務局が中心に関係局がまたがり、市大のデータサイエンス学部からもらったデータを分析しながら、内なる部分の最適化、効率化、リソースの最適配分の議論をしていきたい。

なかなか行政の人の配置については、福祉から道路、港湾まで、全く性格の違う広がりのある仕事を、横並びでどう評価するのかが難しい。効果についても、公正性や公平性の観点、民間ではできないから行政が行うという仕事など、民間が行うものとは異なることもあるので、そのへんは難しい課題だが、考えてやっていきたい。

藤崎
色々課題のご指摘がありました。組織的に継続的にどう取り組むかが重要。アメリカでも公衆衛生学など、統計やデータに基づく政策立案の蓄積が20年、30年のスパンである。横浜市も今、先陣を切って官民データ活用の動きがあったり、データサイエンス学部を作ったりしている。こうした動きをいかに継続し、より大きなものに作りあげられるかが、これからの横浜市にとって重要な要素。大変だという話もあったが、乗り越えて、今年1年取り組んで頂きたい。

財政局 2018年3月16日

藤崎
2月27日の予算関連質疑では、目標や評価、EBPMについての質疑をいくつか行った。昨日の総務局でも、しごと改革の視点でも、こうした視点が重要ではないかと、議論を行った。目標や評価を分析した上で、その上で誰がどうグリップしていくかを考えると、財政局が予算査定においてどう評価できるかが重要ではないか。一律で何パーセント削減しなさい、みたいなやり方だけでなく、財源の配分を効率的にシフトしていく必要があるのではないか。

EBPMを全庁的に取り組みたいと市長からは答弁があった。全庁というと様々な局があるが、財政局が果たす役割は何か。

財政局長
トータルとしての財政運営に関するデータと、個別の事業をどう評価するのか、の2つがあると考える。大枠の方は、財政指標、健全化指標に関する一定のデータがあり、分析ができる。個別の事業については、「事業計画書」があり、進捗状況が確認できる。ただ、事業毎の進捗状況について、目標通りに進んでいないから止めていいのか。予算の数字は、大きな政策であればあるほど、進んだから止めていいという話でもないし、進まないから思い切った対策を打たなくてはならないものもある。単純にデータを見るだけでなく、様々な議論を行わなくてはならないなかで、EBPMを使って個別の事業をどう審査するかについては、もう少し研究したい。

藤崎
事業評価書には目標設定が曖昧なものも、数多く見受けられる。その中でどう評価するかは、非常に難しい。その目標設定をどうするかは、全庁的な課題だと考える。

局長からは研究したいという発言があった。横浜市がこれから、政策の作り方、評価の仕方を新しくできるかは、より効率的な財政運営に直結することだと考える。全庁的に取り組むといっても、形骸化しては意味がない。目標や評価指標を全部見直していく作業を通じて、業務の効率化や、財政の健全化、横浜市の価値の向上につなげていかなくてはいけない状況にあるのではないか。全庁的と言ったときに、政策局、総務局、財政局の3つがグリップを効かせていかなくてはいけないのではないか。そうした中で、財政局的な視点、それ以外の視点から、今後どう取り組むのか、副市長の見解を聞かせてください。

副市長
横浜市にはおよそ3,000の事業がある。4年毎の中期4カ年計画や各事業を評価していただくために、指標や目標をより分かりやすくお伝えすることを、これまでも取り組んできた。前回の中期計画の評価段階でも、役所内でも様々な意見があり、相応しい指標だったかどうかの検証もしっかり行う必要があると考えている。中期計画レベルで大きく指標を取り上げられる事業については、4カ年という中での目標、評価、を明らかにする中で、各年度の予算編成に反映できる姿に結びついていくよう取り組んでいきたい。

それ以外の様々な事業について、「推進」のような目標しか示せないものもある。とはいえ、1つ1つは税金を投じている事業でもある。目標とは別に、効果が上がっているか、費用が適正かどうかを、1つ1つの事業、もしくは束ねた形で検証することで分かるようになるのか。もう一方では公会計の取り組みも進めてきたので、今後蓄積されれば経年で見れるようになるし、他都市との比較もできるようにもなるので、そういった示し方を試行錯誤しながら、市民の皆さまに、評価し、理解していただけるよう取り組みたい。

藤崎
先日は市長と議論を行い、経済的な部分ですが、税収や雇用、経済成長率など私から提案する中で、「適切に指標を設定していく」という答弁を頂いた。目標がしっかり立てられないと、後から評価のしようがないということが実際のところではないか。いま「難しい」という話もあり、ものによっては「推進」としか書けないのかもしれないが、今までそうだったことの継続の中で目標を立てるのではなく、新しく計画を作り替えていく中で、目標設定の考え方も常に変えていかなくてはいけない。今まで推進としか書けなかったから、推進としか書けない、というやり方を続けていく限りは、その先に政策的な向上を実現できない。常にもっと良い目標が立てられるのではないか、それにもとづいて評価をし、より良い予算編成、予算執行ができるのではないか、と考えて取り組んでもらいたい。

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