7月31日、「こども青少年・教育委員会」の行政視察で、秋田県男鹿市の子育て支援施策「おがっこネウボラ」の取組について伺いました。「ネウボラ」はフィンランドの取組として注目され、フィンランド語では「アドバイスの場所」という意味です。
おがっこネウボラ
2014年に設置された「おがっこネウボラ」は、母子保健コーディネーターを中心とした保健師、助産師、臨床心理士などによる支援チームがひとつの窓口となり、子育て世帯の悩みや相談に寄り添いながら、妊娠から出産、就学まで、継ぎ目なく一貫して、親子を支える取組となっています。設置された背景には、男鹿市でも進行する著しい人口減少があります。2014年度には30,632人だった人口は、2019年2月末時点で27,497人まで減少していて、減少傾向が止まりません。
出生数も合わせて減少していて、2006年には184人の出生数があったものの、ネウボラ設置の2014年には103人、その後少し上昇し、2015年が108人、2016年が111人となりましたが、2017年には97人、2018年には76人と、減少傾向にあります。一方で第3子以降の出生は2014年が22人、2015年が21人、2016年が21人、2017年が26人、2018年が24人となっていて、出生数に占める第3子の比率が上昇し、2017年に第3子以降を出産した女性の平均年齢が34.5歳、2018年にはそれが35.2歳と上昇しています。一方では未婚率が高く、25〜39歳男性は58.7%(県5位)、女性は43%(県2位)となっています。人口の自然増を促すためにも、妊娠からの子育て期間の不安を減らし、「安心して子どもを産み育てられる実感が得られる環境をめざす」として取組が進められてきています。
おがっこネウボラの特徴と効果
一貫した支援をするための課題として認識されているのは、「支援を提供する側」が変わるタイミングです。支援を提供する側が変わるタイミングで支援が切れやすいので、そのタイミングで支援者同士の連携を行っています。就園のタイミングと、就学のタイミングがそれに当たります。就園の際には、乳幼児健診の結果をはじめ支援情報の提供や、相談を、園側とも行っています。就学においても、教育委員会や教員とつながっていることで、就学時に子どもの状況を伝えられるだけでなく、就学後も教育委員会からネウボラにフィードバックがあったり、養育者が就学後にもそれまでの子どもの育ちの状況を確認しに来たりすることもあるそうです。一貫した支援を行うための考え方としては「バトンを渡す」のではなく(バトンは落とす可能性がある)、「のりしろをつくり、しっかりと貼り合わせる」という考え方で取り組まれていました。
「支援を受ける側」については、養育者の「相談力」の向上が目指されていました。養育者が「気になること」は、放置されてしまうと場合によっては「対応しきれない問題」になってしまうかもしれません。そうならないようにするためにも、ネウボラに気軽に何でも相談できるようにし、それによって問題が大きくなる前に対応できるようにするとともに、ネウボラとしても養育者と支援者との繋がりを増やすことになり、より細やかに情報を得ていくことが可能になります。
おがっこネウボラの強みはなんといっても、養育者との繋がりによる、情報量の多さです。妊娠の届け出から始まる支援者との接点を多く設けることで、養育者と子どもを支えていく仕組みが構築されています。特徴的な取組としては、ママ・サポート119があります。消防署と連携した取組で、登録した妊婦さんの情報を消防署と共有し、万が一の時に迅速に対応できるようにしています。また健診も充実していて、妊産婦健診は23回用意されています。横浜市の妊婦健診の補助券は14枚ですから、大きく回数が異なります。乳幼児健診は、4ヶ月、7ヶ月、10ヶ月、1歳6ヶ月、3歳の5回。乳幼児歯科検診は1歳6ヶ月、2歳6ヶ月、3歳の3回。幼児けんこう教室では専門機関との連携で心身の発達支援が行われ、その情報を満5歳けんこう相談でも活用し、どんな支援が必要か対応されています。子どもと養育者と接する機会を数多く持つことで、細やかに状況把握を行い、相談しやすい環境となっています。障害や虐待などの課題も、ネウボラ設立後の方が、発見しやすくなっていると仰っていました。
様々なメリットもある一方で、皆さん仰っていましたが、そもそも子どもの数が少ないというところが重要なポイントでもありました。数が少ないがために、子どもや養育者の顔と名前を覚えるのも難しくなく、信頼関係を構築しやすくなっています。76名であれば、学校の2クラス分程度。人口が約2万7千人で、世帯数は1万3千世帯ですから、横浜市であれば、連合自治会数ヵ所程度、大きい連合1ヶ所程度の規模です。逆に言えば、地域をメッシュで捉えると、子ども、養育者、支援者とのコミュニケーションのあり方は変えられるのかも知れないとも思いました。
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