仙台市のICT教育と、校務支援システムによる効率化。

2019-08-01 23:39:44 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

8月1日、「こども青少年・教育委員会」の行政視察で、仙台市のICT教育の現状と、校務支援システム導入の取組について伺ってきました。

ICTを活用した教育の推進

2020年から「新学習指導要領」に基づいた学校教育の実施が始まります(小学校は2020年、中学校は2021年)。新学習指導要領では、「情報活用能力」が、言語能力、問題発見・解決能力等と同様の「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられ、学習活動におけるICT(コンピュータや情報通信ネットワーク)の積極的な活用が示されています。「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」においては、具体的な整備目標の水準が示され、

(1)学習者用コンピュータ 3クラスに1クラス分程度整備 (3.3人/台)
(2)指導者用コンピュータ 授業を担任する教師1人1台
(3)大型提示装置・実物投影機 100%整備 各普通教室1台、特別教室用として6台
 (実物投影機は、整備実態を踏まえ、小学校及び特別支援学校に整備)
(4)超高速インターネット及び無線LAN 100%整備
(5)統合型校務支援システム 100%整備
(6)ICT支援員 4校に1人配置
(7)校務用コンピュータ 教員1人1台

といった数字が示されています。仙台市では現時点でも(2)、(5)、(7)については水準を達成しています。達成できていないものについては、2021年度までの目標値が定められています。

(1)学習者用コンピュータ 5.2人/台
(4)無線LAN 普通教室100%

ICT機器を活用した教育の推進のために、課題の抽出や共有を行う、情報教育担当者連絡協議会(年2回)、タブレット活用校連絡協議会(年3回)、情報モラル教育推進会議(年3回)が行われています。職員向けに希望制で行われる研修もあり、時間が取れない教員向けに、インストラクターが学校を訪問して実施する研修が行われています。また、活用事例集や定期的に啓発冊子を発行することで、現場の教員に情報提供を行っています。

今後の課題としては、新学習指導要領が求めるレベルまで全ての教員のスキルアップを果たせるよう、教員の指導力の向上が必要なことや、情報活用能力の把握をすることとそのための成果指標を設定すること、教員の多忙化の解消、ICT環境整備に向けた予算確保、などが示されました。

校務支援システムについて

校務支援システムは、文部科学省の「教育の情報化ビジョン」(2011年4月)によって2020年度までに全ての学校で導入することが示されています。仙台市としても、「仙台市教育振興基本計画」において、教職員の多忙化解消、校務効率化の手段として、校務支援システムの導入が検討されてきました。事業目的は教員の多忙化解消を通じた「子どもと向き合う時間の確保」、達成目標として「教員一人あたり1日30分の校務時間削減」が掲げられています。

2007年頃から既に校務情報化部会等での導入検討が行われていて、2014年に外部コンサルタントによる導入効果調査実施が行われたことを機に、具体的に導入検討が進められます。2016年には事業者との契約が締結され、2018年4月から全校での全機能利用開始となっています。校務支援システムの導入費用6.3億円(開発3.5億、運用2.8億)程度かかっています。小学校、中学校9年間の出席簿、体力テスト、指導要録、通知表などがデータベースに保存され、入学から卒業まで、子ども達の状況を継続的にデータとして把握することができます。

導入後半年で、校務時間削減が一人あたり1日19分と、目標値の約3分の2まで達成しています。導入効果の良かった点として、会議時間の短縮や、全校統一のシステムが導入されたことで、他校の先生とも気軽に連絡が取れたり、学校を異動してもシステム操作が変わらないこと、出席簿や学校日誌の作成作業が楽になったことなど、が示されました。一方不満や不安もあり、データ授受が容易になったことで送付文書の量が増えたことや、操作を覚える手間がかかること、役職が変わると権限も変わり操作を一から覚えることが大変であること、情報の蓄積がまだ少なく、分散して置かれてしまっていることなどが示されていました。また要望事項として、通信表・成績の評価文書等を全市で統一させて作業負担の軽減につなげてほしいということや、ペーパーレスの推進などといった前向きな要望が示されています。

質疑応答から

質疑においては、校務支援システム導入によって既に約19分の削減が実現していることに対して、子どもと向き合う時間がどれだけ確保されたのかを伺いました。これに対しては具体的に把握はできていないものの、物理的に面と向かっての向き合う時間についてというより、成績の履歴をデータベースで確認できるようになったことが、指導に有効となっていると仰っていました。また、データベースでの子ども一人ひとりの成績に合わせたフォローアップができているかについて伺いましたが、個々に合わせてのフォローはできていませんでした。それでも、クラス単位での傾向に応じた指導や、教科担任制の中学校では、他の教科における生徒の成績を把握することができるようになったのはメリットであると説明がありました。ICTを活用した教育と、校務支援システムとの連携を行って、教材共有など、ICTの特性や統合されたシステム導入のメリットを活かせているかについても伺いましたが、まだそこまでには至っていませんでした。

仙台市役所

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