横浜市の「新たな劇場整備の検討」と課題。(政策・総務・財政委員会)

2020-07-18 17:32:38 | カテゴリ:活動報告


横浜市新たな劇場整備検討

2020年7月1日、横浜市会令和2年第2回定例会の「政策・総務・財政委員会」が開催されました。政策局の審査においては上程された議案の他に、横浜市が進める「新たな劇場整備の検討」について報告が行われました(※配布資料)。

横浜市の新たな劇場整備計画は、平成30年度から1,000万円の予算による検討調査から始まり、令和元年度は3,000万円、令和2年度は2億円の検討費が計上され、基本計画策定に向けて、検討委員会が開催されています。いまだ横浜市の劇場整備に関しては、建設費や、総事業費などが示されていませんが、昨年行った他都市の劇場整備に関する視察では、滋賀県のびわ湖ホールは整備に300億円、年間10億円の指定管理費、大規模修繕には70億円もの予算がかかることが示され、愛知県芸術劇場では劇場部分の整備費ははっきりしなかったものの、全体では628億円の建設費、改修費用は116億円もの予算が投じられていることが明らかになりました。日本トップレベルの新国立劇場は、建設費に750億円もの費用が投じれられていることなどから、横浜市が目指す「世界レベル」の劇場となれば、数百億円の投資になることが予想されます。(※視察報告ブログ

今年は新型コロナウイルス感染症の問題も生じましたが、それ以前からこの計画を見直すよう求めています。長期的な財政見通しの課題もあり、オペラやバレエの公演が可能な多面舞台を備えた劇場は運営が非常に厳しいというのも、他都市事例からもわかります。今後は外国人観光客の回復がどの程度望めるかなどの課題もあります。そもそも横浜市の創造都市施策や、文化芸術施策のこれまでの蓄積と、オペラ、バレエが可能な劇場整備とのつながりも見いだせないなど、なぜ横浜市が劇場整備を行うのかにも疑問があります。これまでの議会質疑でも、各会派から様々問題が指摘され、見直しを求める意見が出されています。7月1日の質疑でも活発に議論がなされ、問題提起が行われています。

以下、藤崎浩太郎の質疑部分を抜粋した中継動画と、その文字起こしです。
(※議事録ではないので、実際の内容とは若干言い回し等が異なります。)

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藤崎 あらためてなんですけれども、この、予算検討委員会と検討部会とあって、このお金の議論っていつ誰が、この検討委員会でそもそもやるのか、また別で行政側、横浜市役所の行政側でやるのか、いつ誰がどこでやるのかっていうのをちょっと教えてください。

尾仲富士夫 芸術創造本部室長 今回、検討委員会あるいは管理運営部会の方でですね、事業計画の見通しというものを、現実的には私共のほうが事務局になって、ご指導いただきながら数字を出し、また見ていただき、先程副市長の答弁もございましたが、パターンとしては複数案みたいな形になるのかはわかりませんけれども、事務局としては市側が事務局になっておりますので、ご指導いただきながら部会なりにご提示をしていくというような作業で進めていく考え方でございます。

  
藤崎 具体的にそれ役所が提案するのは、いつぐらいにその部会側に提出される、まあ先程の委員長発言で12月くらいだろうという話がね、まあこれは昨年と同じでやれば、12月くらいだろうという見込みがあるということでしたけど、そこまで半年間しかなくて、その間に部会に役所が提出をして、見てもらってって話をやってくと、非常に短いスパンでの見通し事業計画、財政的な部分ですね、予算的なところ、非常に短い間での議論になるかと思うんですが、いつの部会で出していくという予定なんですか?

尾仲室長 大きくコストという意味ではですね、 あの川口先生からもご指摘いただきましたけれども、主としては運営の部分、建設の方と運営の部分と費用は大きくは2つ分かれてございますけれども、いずれにしてもですね、運営につきましては、どういう演目を1年間の中で、どれだけやるのかといったようなプログラム素案みたいなものを出しながら、結果的にはお金を出していくという形になってくるかと思いますので、我々の事務局の作業としては、お金が出す前の段階として、そういう枠組みがどうなるのかということを、まず検討部会にお示しをし、そこでそれはそうじゃないよねというご意見があったり、いやいやそのまま進めてみたら、というようないろいろなご意見があるかもしれませんけれども、そういった意見をふまえて、お金を出していくということになると思いますんで、その手前の段階がいつ各検討委員会の方々から妥当性をいただけるかというところで、スケジュールが決まってくるかなとは思っております。

藤崎 流れとしては、そういうことだとは理解するんですが、その短い間にどこまでこれ決められることなのか、「部会として委員会としてそれを承認してもらって、令和2年度としての委員会ではそれが承認されました、だから横浜市としてはこの事業計画で行くんです」、までを今年度決めていくようなものになるんですか。

尾仲室長 提言がですね、時期の問題はともかくとして、あくまでもこれは検討委員会、有識者による付属機関である検討委員会が、みずからお考えになって出されたもので、市はその提言をふまえて、その後市としてどういうふうにそこを事業としてあるいは市の施策として、考えていくのかというのはその次のステップになるかと思っております。いずれにいたしましても、そうは言いましてもやはり市民のみなさんの目にオープンになるっていうのは、検討委員会の場ではございますので、その段階で先程の答弁とだぶりますけれども、そこで数字をお出しをしながら、まず検討委員会でもんでいただき、それをふまえて提言が出て、それをまたふまえて市としてどういうふうに施策として考えていくのかという段取りになるかと思っております。

藤崎 本当にこれ、ニワトリ卵みたいな議論のように見えて、でも先にやっぱり財政、予算がこれ先にどうしたってないと話にならないと思っていて、もちろんその仕様が決まんないと、予算が見えませんって理屈はわかるんですけど、いや家建てましょうっていう時に5000万の予算で家を建てるのか、1億の予算でたてるのか、これそもそもそこがないと、あれもこれも乗っけたいです、じゃあ3億円の家が建ちます、ってお金なかったら無理な話じゃないですか。じゃ横浜市として、お金の部分だけで言えばね、中身の話抜いた時に、お金の話がじゃあどこで収支があの見通せるのか、国家的プロジェクトだって言いたいのかもわかんないですけど、さっき荒木委員からもありましたけど、見通しのないお金を期待して、なんかいつまでもはっきりしない予算の下で、2年3年議論して、で検討費で2億とか今年度ついて、来年度も何億つきました、でそれでなんかよくわからないぼんやりしたところをはっきりしていく中での、一番重要なのはこれ予算だと思っていて、たとえば新国立劇場との分担や連携とか、もちろん新国立でやった演目を、横浜に出来た新しい劇場で同じものをやってくださいって仮に言おうとすれば、新国立と同じ規模が必要だってことに、単純になっちゃうわけですよね。そうすると、じゃ1997年の建設ですけど、750億円だと。じゃこれ今の物価だともっとあがるかもしれませんよね、ってのが話としてまず土台にないと、それ誰に納得してもらうかって、市民に、芸術は素晴らしいですよねって納得してもらうことももちろん重要ですけど、その前に750億円を超えるかもしれないようなものが建つかもしれませんよっていう、本当にその予算でいいんですかって。それやるには4面で新国立と同じことをやろうとするとそうなりますと、でも2面だったら何百億で済みますとか、1面でもいいかもしれませんとか、そこらへんのお金の議論がちゃんと無い中で、先に内容ありき、演目ありき、連携ありきとか、育成プログラムありきとかっていう議論が先行するんで意味が分からないと思うので、ここらへんはしっかりと、まあ750億ってこの新庁舎1こ建てるのと同じくらいの規模の予算を、本当に劇場にかけるだけの意味があるか、市民から見て意味があるか、そして効果があるかっていうのをはっきりしていただきたいと思うんですが、まあそれは今年度部会でやって、それを市役所がね、市がどう判断するかはそのまだ先ですって話ですが、市が判断するというのはどういうスケジュール感でやろうという見込みなのかを教えてください。

尾仲室長 まだ市の判断のスケジュールというのは、当然提言の時期もまだ見えてない状況でございますので、具体的に持ち合わせてはいないというところがございます。それと今副委員長の方から聞かれた質問でなくて恐縮ではございますけれども、新国立はたしかに750億くらいかかったというのが実績でございます。一方で同じような多面舞台を作っていて、たとえばびわ湖の場合は250億ぐらいといってまあ副委員長よくご案内かと思いますけれども、それぞれのしつらえ方っていうんでしょうか。全体の作り方っていうのは結構重要でございまして、単純にその一概に決めれるものではないというところがございます。そういう意味で、今回基本計画検討部会と言いますのは、やはり総事業費、総建設費がだいたいいくらぐらいかかるんであろうかといったようなところを出すためにも、極論はですね、新国立のようなパターンで作るのか、琵琶湖のようなパターンで作るのか、あるいはその真ん中くらいの形で作るのかといったようなことも議論しながら、そういった数値ではニワトリと卵かもしれませんけれども、いずれにしてもそういったものがないと、お金も出てこないとこもございますので、そういった形で進めていきたいというふうに考えております。

藤崎 私もびわ湖とかね、視察にお邪魔したりしてますんで、状況は確認していて、おっしゃる通りいろんな金額があるにしても、何が、たとえばね、国際レベル、まあ世界レベルといった時に、箱の大きさが世界レベルであるのか、音響が世界レベルなのか、もしくは今トレンドで聞くのは、劇場によって面数が違うので、出来るだけ小さい面数に合わせた演目を作るほうがいろんな舞台、世界中あちこちに公演に行けるから、そのほうが輸送コストも低いし、あちこちで出来て儲かると、採算性でいえば。さらにプロジェクションマッピングみたいな技術が上がって、別に多面舞台を移動させなくても、いろんな工夫が出来るようになってきてるのが今の主流だということであれば、それがもしかしたら世界レベルなのかもしれないとか。じゃあそれがいろんな言葉が躍りすぎていて、何が横浜市にとって、もしくはこれからの劇場における世界レベルなのかっていうのも、はっきりとしなくちゃいけないはずなんですが、そこらへんというのは、予算と中身と、ニワトリ卵みたいな話になりがちなんで、まずはしっかりと予算面っていうのは整理していただきたいと思っているのと、そのうえでこの間も6月17日の管理運営部会のほうで、HP出て未定稿と書かれていますけど、HPに載ってる発言要旨ですね、こういうのを拝見すると、コロナ禍においては、財政支出だけではなく、生産性の回復が必要であって、劇場整備が日本経済の復活のカギになるとか、文化芸術が先進国に共通する成長産業であるとか、国際交流が生まれて経済も回るとか、まあいろいろなご発言があるのですが、これまあ本当にどこまで、どなたがおっしゃっているかわかんないし、根拠があっておっしゃってるのかもしれないんですけど、言葉としてはそう言われていても、実際にその経済効果はどれだけあるのかっていうところも、考えてちゃんと研究していかないと、分析していかないといけないし、10年単位でこういう感染症とか出た時に本当にそれでリスクとれるのかとか、いうところもある程度見えなきゃいけなくなった中で、事業費だけじゃなくて、諸々の周辺にあるお金、要は経済効果がありそうだねっていう議論が、言葉だけで躍って進むんではなくて、数字としてあるのかないのか、どうやって見ていくかというのは、それは今年度合わせて、検討されるんでしょうか。

尾仲室長 経済効果につきましては、実を言うと昨年度もですね、経済効果の考え方といったようなことを議論いたしました。その時にですね、やはりその逆に言えば、数字をしっかりと計算できる専門家の方からはですね、やはり今一般的に出回っているプログラムですと、あまりこう2次3次というような効果が出にくいところがあってですね、とくに文化芸術のような、そのたとえばアニメ産業とかそういったところまでどんどん実を言うと波及はあるんだけど、それはなかなか数字では出しにくいというようなところもあり、で、実を言うと昨年度はイメージで、こういうイメージで波及があるというところまでは議論をいたしました。で今年度はですね、やはり私共も事務局としては、今副委員長と同じで、数字を出したいという気持ちは、ものすごい持っているんですけれども、一方でそのことと実際のあるところとのギャップがまだあるというお話も聞いておりますので、出したいという気持ちを持ちながら、少し部会の中でしっかり議論していきたいと思っております。

藤崎 よろしくお願いします。ほんとそこの議論って非常に重要だし、別に文化芸術政策が無駄だって、たぶんあんまりどなたもおっしゃってなくて、それが価値のあるものだということは理解しながらも、じゃあどうしていくかってことだと思うので、まあお金の話抜きには出来ないと思うので、そこをしっかりしていただきたいのと、最後1個だけ副市長に一応確認ですけど、まあたぶん問われているのは、都市アイデンティティがなんなのかということで、さっきも豊田委員からも歴史の中で出来上がってきた劇場だというような話とかいろいろありましたが、横浜市がこの20年くらいでいえば、文化芸術という言葉と創造都市ってことを一緒にやってきたわけですよね。この間やっぱり創造都市と言えば、単純な舞台芸術のみならずですね、基本的にはオルタナティブのような芸術を作ってきた。特にトリエンナーレなども、日本でトップレベルの芸術アートイベントとして成立させてきたという歴史がありますが、本当にその文脈歴史の中に、今このオペラバレエがどうあてはまっていくのかもよくわからない、本当にそれが横浜市が築いてきた文化芸術創造都市という施策の中に当てはまるのか、関内外に集積してきたアーティストとかが、今後どう活躍の場をもっていけるのかどうかとか、そこらへんをもうちょっと立ち返ってですね、横浜市の文化芸術創造都市と言ってきて、様々な集積を行ってきた蓄積の中で、じゃあ本当に必要なものが、それが劇場なのか、それが本当に劇場だとするのであれば、どんな劇場なのかというのを、もうちょっとやっぱり議論、検討し直す必要もあると思いますし、まあ今急いで、来年再来年に事業者決めましょうみたいなそこまでするようなことでもないはずなんで、もうちょっと立ち返ってですね、そこらへんの議論から積み上げていく必要があるかと思いますが、副市長の見解をお願いします。

小林副市長 新たな劇場については、まさにその文化芸術創造都市の延長線上で、これから横浜市としてどうあるべきかということで考え、位置づけております。ただその辺のその補強というんですか、その考え方の整理というのはですね、当然検討委員会でいろいろご議論したうえで、あらためて横浜市として再制御するということになると思いますけれども、総合計画の中にもそうした考えは打ち出しているというふうに思ってます。今のご質問で、今の段階でお答え出来るのは、このあらたな劇場というのは、161年にわたるこの横浜の都市の歴史の中でですね、これから横浜市としてはどうあるべきかということは、当然前提としてあります。この間の文化芸術創造都市の取り組みの中において、どうあるべきかということもありますし、単に文化芸術ということだけにとどまらずですね、横浜という都市が、まあ今都市のアイデンティティというお話もございましたけれども、市民の愛着あるいは世界に向けたアピールというかPR、都市の品格といった様々な要素を重ね合わせて、必要な施設として整備を検討すべきであるということで考えたものでございますので、やはり都市の在り様と、この新たな劇場がですね、一体的に考えられて、我々としてはこれからも整備の検討を進めていきたいと考えております。

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