企業誘致とスマートシティ。名護市視察報告。

2023-11-02 08:05:17 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2023年11月1日は、常任委員会「国際・経済・港湾委員会」の視察2日目で、名護市における「経済金融活性化特別地区」の取り組みと、それによる地域産業基盤強化、雇用機械創出、企業誘致といった内容についてお話を伺いました。

名護市では市街地から郊外部への人口流出が課題となりながらも、老年人口が全国に比べて低く、生産年齢人口比率が高いという特徴があります。2002年には国内唯一の金融特区と、情報特区の指定をうけ、2014年には経済金融活性化特区に、そして2022年には経済金融・情報通信業企業誘致推進計画の構想が開始されています。企業集積施設が6施設(マルチメディア館、みらい1〜5号館)設けられ、現在47社、1,229名の雇用者があり、誘致企業、雇用者数は右肩あがりの状況が続いています。名護市は所得が低いという課題があり、金融・情報通信業は賃金が高い傾向があるため、この領域の企業誘致を推進してきたそうです。

名護市の弱みと脅威

企業誘致観点での名護市の現状についてSWOT分析が行われています。「名護市の優位性の変化」の項目については、賃金上昇によるコストメリット優位性の弱化や人材不足が弱みであり、充実した労働環境(住環境等)を求めた若年人財の外部流失の加速が脅威、「競合(他県他市の企業誘致)の台頭」については、名護企業の認知不足による若年人財獲得の機会損失等が弱み、沖縄県内他市への誘致ターゲット企業の分散等が脅威、「企業の求める要素の変化」については、募集する人財要件と北部地域の中途人財レベルの乖離が弱みで、「進出先に求める要素の高度化」への対応遅れによる企業離れが脅威、という整理がなされ、これらの弱み・脅威を乗り越えるための施策が、今後の経済金融・情報通信業企業誘致計画に求められることとされていました。

経済金融・情報通信業企業誘致推進計画の特徴

2021年度まではハード面中心での企業誘致の基盤整備が行われ、一定の効果が生まれていると評価されています。2022年度に策定された「経済金融・情報通信業企業誘致推進計画」とこれから策定される実行計画では、2022年度から2031年度の期間を、企業誘致の仕組み強化・発展段階と位置づけ、ビジネスエコシステムの形成やエコシステム活性化企業の誘致等に注力していくこととし、ハード面での整備からソフト面での強化へと方向が転換されています。

名護市のスマートシティ構想のコンセプトには、「”響鳴都市”名護」という言葉が使われています。「”響鳴都市”名護」は、人や企業、まちの歴史と未来、最新技術と自然などのあらゆる地域資源が、「もっと輝く名護市を創る」という想いをもって、それぞれの力を発揮(音を奏で)、互いに響鳴させ(ハーモニーを生み出す)その力を最大に引き出す新しいまち、と定義されています。街の賑わいの創出、産業クラスターの実現、人・文化の発展、の3つの要素でその実現にむけた取組が進められています。

名護スマートシティ推進協議会

スマートシティ実現の基本方針には3つの方針が掲げられています。方針1では、行政主導ではなく、産学官/地元・外部の様々なプレイヤーと連携してまちづくりを推進することが示され、その推進組織として、今年の1月に「一般社団法人名護スマートシティ推進協議会」を設立し、まちづくり推進の中核の役割を担っています。方針2では、実フィールドで市民の声を聞き、課題(ニーズ)先行型のデジタル活用施策を進めることが示され、推進する「場」としてリビングラボが設置されています。方針3では、名護の発展を担う地域人材の育成・誘引、定着化の促進が示され、地場大学等の学生の育成や、地域外の人材を誘引を行うこととされています。

推進協議会は具体的な取組を行う場としてして「名護スマートシティコンソーシアム」を設置しています。企業にとって、他県他市から名護に進出することは大きな投資となるため、縁のなかった企業に進出してもらうというのは非常にハードルが高いものとなります。そこで、市外の企業もコンソーシアムに参加できるものとしていて、現在は40社ほどが会員になり、6割位が名護市外の企業になっているそうです。2026年までに「スマートシティ名護モデル(第一期)」を確立し、沖縄県内のみならず、国内外に地方創生の先進事例として発信することが、ロードマップの目標となっています。

ワーキンググループによる課題解決の検討

コンソーシアムが、名護市のビジネスエコシステム構築の仕組みづくりに重要な役割を果たしていて、コンソーシアムでは、民間主導・有志企業主導で、名護市の地域課題に根ざしたテーマ別ワーキンググループ(WG)を設けて、WG毎に事業企画を検討しているという状況にあります。先行WGとして、観光WG、交通WG、農業WG、まちなか再開発WGと、分野横断のスマートシティ基盤WGが立ち上げられて、それぞれ、目指す姿や現状と課題の分析などを行いながら、参画した企業が地域課題解決に向けた活動を行っています。WGは今後実証実験や実装化が進められていくこととなりますが、必要な予算は国の助成金を活用したり、クラウドファンディングを活用したりと、事業の内容や実証、実装の段階に応じて調達方法を検討をしていくということでした。

今回視察場所となったのは、「Nago Acceleration Garage(NGA)」という名称の、オープンイノベーション施設でした。NGAは名護スマートシティ推進協議会の活動拠点であり、オープンイノベーション施設として、様々な交流やイベントのために用いられています。NGAはKPMGコンサルティングが設置・運営している施設となっています。名護市とKPMGコンサルティングは2022年8月に、「スマートシティ名護モデル」実現のための包括連携協定を結んでいます。KPMGは推進協議会の社員企業という役割も持っていますが、今回の視察でも取組の説明を行ってくださっていて、名護市のスマートシティ推進において重要なパートナーとなっていました。

名護市

Nago Acceleration Garage
Nago Acceleration Garage(NGA)の様子

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