車中心の駅前を人間中心に転換。大阪市なんばひろば改造計画視察。

2022-04-19 22:47:23 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2022年4月14日大阪市を訪問し、「なんばひろば改造計画」についてヒアリングを行いました。なんばひろば改造計画では、道路空間再編(歩行者空間拡大)の社会実験が、2016年11月と、2021年11月〜12月の2回開催されています。駅前のタクシー乗り場、バス乗り場、荷捌き場を広場から移動させて、駅前広場を歩行者空間に再編するものです。それによって、人々が滞留し寛げる場所にし、関空からの訪日観光客の方々にとっての大阪の玄関口として、顔になるような場所にしようという取り組みです。

大阪市全体での動き

大阪市としては、リニア新幹線の開業時期を目指して、新大阪エリア、大阪駅北側、中之島エリア等の再開発、御堂筋の側道歩行者空間化が並行して取り組まれています。地図で見るとよくわかりますが、新大阪から難波地域まで、南北でつながる一本の軸のようになっていて、この南北軸を経済成長、国際競争力の向上、観光拠点、大阪市の顔・玄関口としての魅力向上、につなげるために、一体感を持ってまちづくりに取り組まれています。

なんばひろば改造計画

現在は市も関わって社会実験が行われているなんばひろば改造計画ですが、元を辿ると1995年度の大阪ミナミ広域活性化協議会によるパールリング構想まで遡れるそうで、地域主体で検討がなされてきた計画です。2011年度に「なんば安全安心にぎわいのまちづくり協議会」が立ち上がり、大阪市が「まちづくり推進団体」に認定します。協議会によってアンケート調査や社会実験、シンポジウムが重ねられ、2014年度にはコア地権者推進合意に至ります。2015年度には地元、行政、経済界による検討体制「なんば駅前広場空間利用検討会」が立ち上がり、行政も入った検討体制に入り、2016年度には「なんば駅周辺道路空間の再編に係る基本計画」の策定がなされ、第1回目の「なんば駅周辺道路空間再編社会実験」(11月11日〜13日)の実施に至っています。

社会実験の内容と意義

1回目の社会実験は、主に地域からの機運情勢のもと実施され、3日間の限定で駅前の仮設広場化、なんさん通りの一方通行化、タクシー乗り場の一時移設が実施されています。賑わいの創出につながったものの、タクシー業界からの課題や、周辺の飲食店等に納品をする車の荷捌き場の問題、なんさん通りに面した出入り口のある駐車場の問題など、課題も浮き彫りになります。

2回目の社会実験は、2021年11月23日〜12月2日の期間で行われました。2回目の目的は3つの検証テーマを設けて、データを取得すること。このデータ取得が、行政が主体的に関わることの1つの意義でした。3つのテーマは、「A 交通機能の再配置の検証(タクシー乗り場、バス乗り場等)」、「B 荷捌き運用の検証(地元事業者)」、「C 安全で円滑な交通計画に関する検証(交通管理者)」となっています。これまでの広場化の議論において警察からも安全性について指摘されるようになり、3つのテーマは警察とも協議して設定されています。

それぞれの検証は、広場化や、タクシー・バス乗り場と荷捌き場の移設、交通の安全性など、事前に想定されている課題を検証することで、心配された問題が生じずうまくいくことや、結果として生じた課題があることなどが、明らかになっていきます。警察を始め、既存の利用者に変化を求める広場化において、関係者を説得していくには合理的な説明が必要であり、行政が関わる社会実験でデータを取得できたことで、関係者の理解も進んでいると言います。また、幅広い関係者が参加する実証実験を行うことで、広場化について「知らない」という関係者を減らすことができているようでした。

2回目の社会実験の主催は、大阪市の建設局、計画調整局と、「なんば広場マネジメント法人設立準備委員会」でした。今後は、エリアマネジメントのスキームをどうするかが課題の1つでした。社会実験の成功の一部には、警備員を配置していたことで達成されている部分があり、持続可能な仕組みにするには維持管理費を捻出するための収益をどうしていくかという課題が残されています。

まとめと感想

大阪市の視察は度々行ってきました。公共空間の活用については2012年の「水都大阪」、経済成長については2014年に「大阪イノベーションハブ」、2020年にはデータ活用による観光戦略、といった視察を行っています。今回のなんば駅前広場について、どのくらいの人の流れがあったのかについて質問したところ、同時期に御堂筋で人流マネジメントの社会実験が行われていて、道頓堀川から南側全体のデータを今分析中であり、その結果からなんばのことも分析可能という説明がありました。この10年間に、都市としての大阪の発展を見据えて、社会実験を繰り返しながら、公共空間の再編・活用やデータ活用にしっかり取り組み続けて、発展させてきているところに、大阪の強みがあると感じました。

また、道路を車中心から人間中心の空間に転換させていく取り組みは、まちづくりのトレンドでもあります。以前同じテーマで、ニューヨークのタイムズスクエアほか道路の歩行者空間化に関する視察を行いました。ニューヨークではあちこちで車道の歩行者空間化が進められていますが、実施前後の経済効果も測定され、車を排して歩行者空間化したことで安全性が高まっただけでなく、周辺のお店の売上向上という効果があったこともメリットとして説明されています。実証実験を行い、その効果をしっかり測定し、データでメリットを示すことは、本当に意味があるのかどうかという点でも、そして関係者が納得して協力していくためにも、重要なポイントです。

藤崎浩太郎

大阪市役所

Post comment